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トーチカ~瑠璃シーン⑤中編3

今日もお話です。

 

アメブロで弾かれましたので

ここに記します。

表現抑えても、さすがに、アレデスネ。


ロンドンウィメンズコレクションでの
ショーモデルデビューに向けて動き出した瑠璃サイドのお話。

書き溜まっているので、
どんどん出します。


トーチカ~瑠璃シーン⑤中編1
ここで、ブランド専属モデルとなりました。

トーチカ~瑠璃シーン⑤中編2
コレクション前の日本の日々


みんなエスパーだよ編。
不倫って何なのさを問う編。
登規くん心真っ裸編。
そんな長い瑠璃シーン⑤。
中編は5までです。
後編は初コレクションの年の
4月まで進みます。



トーチカ~神楽シーン⑤中編
↑ここで椎也のライヴでの神楽との会話の時が、どんどん近づいてきました。
次回、ですね。


トーチカ神楽シーン①
東三河に住む、未来を知っている少女
神楽の眼線

トーチカ~瑠璃シーン①
神奈川に住む、モデルの美少女
瑠璃の眼線

交互に同時期を書いていきます。
どちらにも童顔の二花(つぐはる)が絡んできます。

それ以前の物語はこちら

来る潮帰る波
神楽の母が亡くなったことを、その兄(神楽の父になった人)が回顧する話

実になる花~追伸
モデル瑠璃の母、女優実花と、父、アーティスト椎也の物語。



今回からエロスモード突入となります。
全開エネルギーに向けて。



トーチカ~瑠璃シーン⑤中編3



車を発進させてから、チカは語り出した。

「お嬢、ゴーサイン出たから。」

「え?」

夜道の山合を走る。
ヘッドライトが真っ暗な田舎道を照らす。

「二花の“ラヴアフェア”、使う事になったから、コレクションで。」

「ホントに?」

瑠璃は思いがけない朗報に口を手で隠した。
幾らなんでも、それはムリだろう、と思っていた。

「ん。AmeliaからHappy New year! て電話が来て、そんで、曲、使う事になったって。」

「すごいスゴイ!」

興奮する。
どんどん、叶っていく。

「楽曲使用料払わないといけないだろ?あの曲はパパの作った曲だし、ややこしいんだよ。

 ショーの様子は動画も配信するし。金額上限ある中で、金額提示と交渉は、俺がしろってさ。」

「得意なんじゃないの?そういうのは。」

瑠璃は真っ直ぐをよく見ているチカの横顔を、隣りから見つめていた。

「マアネ。それが二花サイド、でなければね。」

「そっか。二花くんに交渉するの?」

「いや、まずレーベルに。でも、いま正月だからね。明けてすぐにアタックしないと。」

「そうね、時間が無いわね。」

この曲が使いたいと言っても、実際には難しい話もある。
早く具体的に詰めないと。

「チャスが相当気に入ったみたいだね。二花のピアノ。」

「そうなのね。」

もし、チャスが二花と実際に出逢ったら。

「惑わせて、狂わせてやるのもいいかもな。お前は本当にどれだけ、覚悟があるんだって。」

「……逢わせてみて?」

ちょっと怖い。
でも、それがまた、チカの一面。

「二花の神楽への気持ち、確かめさせてやるのも、いいな。やっぱり、いつも通りダメだったとか。」

嘲笑っている。

「俺が導かないでも、そうなるよ、きっと。二花への試しが入る。」

その視点は、神のような視点。
ゲームの駒の配置。
それを俯瞰している。
まだ、判らない、この人が。
瑠璃は、じっとチカを見ている。
妄想という、様々なシミュレーションをしているのだろう、いつも。
その中で成功確率の高い道を、チカはワザと選んでいるとしたら。
偶然を装って。

「俺がお前を好きになって、そんで、こんなぐだぐたな三角関係になるだなんて、予測もつかなかったね。」

予想が出来るなら、こんなに苦しまないで済んだ。

「人生のあらゆる処で想像を絶する、ナニカが起こるもんだよ。」

「チカが他の誰かを好きになる可能性だって、ある訳だものね。」

瑠璃の言葉に、チカは溜め息をついた。

「そんなこと言ったら、お前だってそうだろ?正直、判んねえよ、未来なんて、でも。」

車を脇に止めて、隣りの瑠璃にキスをする。
さっきから対向車も無いから。

「愛してるよ、瑠璃。」

唇を離して、瑠璃の顔を見つめている。

「ああ、してえ。マズい。」

興奮してきたチカの眼に、瑠璃は笑う。

「もうっ。今日はダメでしょ?」

「俺の部屋で、こっそりするか?ん?このまま、ラブホ行くか?」

「もうっ。」

一昨日だって、してるのに。
瑠璃は赤くなった。

「ま、夜、しよ?」

このまま、チカの日本の実家に行って、泊まるのに。
幾らなんでも、同じ部屋で眠る訳にはいかないでしょ?

「ふふん。」

何を企んでいるのか。
チカは運転を再開した。


…………………………………………………………………………



「瑠璃ちゃん、よく来てくれたねえ。どうぞ。」

日本のチカの母、血縁で言うと伯母は、瑠璃を嬉しそうに見ている。

「どうぞ、どうぞ。」

日本のチカの父、チカの伯母の夫がそう、瑠璃を居間に招く。
如何にも極標準な日本の二階建ての家屋、日本の家庭。
チカはロンドンであんな優雅な暮らしをしてきて、日本に来て、よく弄れずに育ったなあと瑠璃は感心する。
カルチャーショックどころか、まず、生活水準が大きく異なる、から。

「あけましておめでとうございます、お義父さん、お義母さん。よろしくお願いします。」

「あけましておめでとうございます。こちらこそ、よろしくね。」

笑っている夫婦。
チカの養母は、眼元がチカに似ているから、瑠璃はよく見つめてしまう。
お茶を飲んでから、遅いので風呂に案内された。
嫁ぎ先の実家に泊まるだなんて初めてだし、緊張する。
湯船に浸かりながら、瑠璃は考えていた。
この浴槽だって、チカの養父と養母も入るのだから。
他人が営む違う家で一泊生活を味わうとは、とてつもない緊張感とか違和感なんだ、と、自分がこういう場面に遭遇すると、よく判る。
チカが初めてこの家に来た時、どんな気持ちになったのだろうか。

でも、良い嫁になろうとして、何でも手伝いをしようとするのはやめておこうと決めていた。
チカはそれを嫌がって、瑠璃は何もしなくていいようにして、と、ちゃんと養父母に伝えてあるから、と。

風呂から上がると、長い髪の毛を時間かけて乾かさないといけない。
瑠璃が風呂から上がったのをチカが確認して、パジャマ姿の瑠璃を部屋に連れて行った。
チカが高校までの少年時代を過ごした部屋、極普通の子供部屋。
本が、いっぱい置いてあった。
小難しい辞典から英語の本、漫画まで、ありとあらゆる本が。

チカは当たり前のようにペットボトルからグラスにミネラルウォーターを注いで置き、瑠璃を机の前に座らせる。
瑠璃が顔の手入れをして、そしてチカが瑠璃の髪をドライヤーで乾かしていった。
瑠璃の髪を動かしながら、時折キスをする。

「しよ?」

チカは耳元で囁く。

「あたしは―何処で寝るの?まさか、チカの部屋で?」

緊張しながら、瑠璃は呟く。

「え?」

ドライヤーの音がうるさくて、チカには声が届かなかったようだ。

「結婚前に、まさか、ねえ。」

瑠璃は笑った。
チカは長い時間掛けて瑠璃の髪を乾かした。

「んじゃあ、俺、風呂行ってくるから。」

チカはパーカーを脱いで、パサッと床に投げる。

「待って。あたしは何処で寝るの?」

改めて瑠璃はチカを見上げた。
チカは不思議そうに瑠璃を見て、ベッドを指差した。

「狭いけど。」

「え?」

ああ、チカは他の部屋で寝るっていう事?

「俺と寝るから狭いよ。」

「えっ?」

瑠璃は慌てた。

「そんな―結婚してないのに、チカの部屋で一緒なんて―」

「何で?いつもしてるでしょ?」

不思議そうにしているチカ。
そんな処かもしれない。
チカがこの家に来て、まず、両親と会話が噛み合わなかったろうと、推測出来る。
養母はそれなりに英語が喋れるから言語の問題ではなく、文化や意識が全く異なる人間とのコミュニケーションの難しさの点だ。

「お義父さんお義母さん、それを何も言わなかったの?」

「や、言ったけど。俺たち婚約してるんだよ?ココ、俺のウチだよね?て再度言ったら、了承したし。」

きっと、言ってもムダだと、諦めたんだ。
日本に来て学校に通い、周りから相当、ハチャメチャなタイプと思われたろう。
チカって。
笑えてくる。

「眠いなら寝てていいよ。」

チカはそう言って、部屋から出て行った。
瑠璃はチカのパーカーをハンガーに掛けてから、カバンの中から美容道具一式を出し、身体の手入れをする。
世の中で、いちばん綺麗になる。
そう決めたから。
寒いけれどパジャマも脱いで、下着も脱いで、全身をマッサージしていた。
ノックも無しに、カチャッとドアが開き、風呂から帰ってきたチカは瑠璃の全裸を見て、眼を細める。

「これはこれは―素晴らしいお迎えをありがとうございます。」

「あ、あたしは身体の手入れをしてるの!」

「俺がしてやるのにな。」

その、ボディクリームを手に取り、チカは瑠璃の脚に触れた。

「俺はお前の手入れをしてるんだぞ?」

息が荒くなる瑠璃を見て、チカは意地悪げに囁いた。

「判ってるだろうけど、声、抑えてね。」

足先から鼠径部へ。
ジッと止まって、そのまま足先に戻る。

「やあぁぁぁ。こんな処でぇ。」

こんなつもりじゃなかったの。
今日はするつもりじゃなかったの。

「俺、何かしてる?マッサージ、だよな?」

意地悪。
脚が、どんどん自然に開いてくる。
キツい眼が、それをじっと見てる。

「どうしたの?瑠璃、そんな顔して。」

反対の脚に触れる。
少し持ち上げて、そのまま太腿まで撫でていく。

「あああーっ。」

「声抑えて!」

少し焦っているチカの顔が、真ん前で止まる。
脚を持ち上げたまま、よく、観察している。

「俺は何もしてないよ。お前はスゴいな。いつも、ココに触らなくても、こんなになる。」

「やあぁっ。」

両足首を掴んで、チカはぐっと持ち上げた。
瑠璃は後ろ手をつく。

「腰が上がってるぞ?」

「あぅんっ。」

「腰が動いてる。卑猥だなあ……瑠璃は。」

「お、お願いします、」

「何?」

「愛してくださぁい、瑠璃の身体中を。」

「どうやって?」

意地悪な眼。
これが大好き。
息が荒くなる。
詳細にお願いしないと動いてくれない。
恥ずかしそうに瑠璃が告げると、チカは脚を持ち上げたまま、瑠璃の胸に吸い付く。

「あ……んチカぁ、あっあっあっ、darling! 」

「頼む。声、抑えろよ。」

身体中を愛したあと、チカはゆっくり埋め込んできた。

「あ、あっあっあっトウチカ……」

「何?すごく気持ちいいよ、瑠璃。」

チカの背中に、強くしがみつく瑠璃。

「突いて……トウチカ突いて……」

「ほら、したかったの、お前だろ?ん?何てヤラシイ顔してんだ?したいから、俺を誘ったろ?判ってんだぞ。」

そうかもしれない。
チカがパパとママに「瑠璃さんを僕にください。」とはっきり言ってくれて、嬉しかったから。

「そぅぅ、なの。チカぁ、お願い、突いてぇ!」

「やべっ。」

チカは慌てて瑠璃の口を手で塞いた。

「静かに、ね。」

そして、激しく突いてきた。
何だか、いつもより感度が上がっていて興奮する。
大きな声が、どんどん出てしまう。
その度にチカは、ぐっと瑠璃の口を押さえる。
ずっと突かれている。
 
「もっとぉ!もっとぉっ!あーっ……」

「瑠璃……スゴい…何だ、コレ?良すぎる……」

チカも、いつもより興奮していた。
汗が瑠璃の身体に滴り落ちていく。

「うぁん、登規さぁんっ!」

「ああ、ダメだっ!出るっ!」

動きの止まったチカの腰に、瑠璃は脚を絡める。
しばらくして、チカは息を荒くしながら、そのまま瑠璃の上に乗ってくる。

「やべぇ……早くてごめん。」

チカは、はあはあと言っている瑠璃の顔を撫でた。

「何?今日の凄さ。お前、何か飲んだ?」

瑠璃は顔を赤らめた。

「ここでだから、興奮した?」

恥ずかしくて顔を逸らす。

「とうさんかあさん居るからな。聞かれたらどうしようって、興奮したんだな?」

首を横に振る。

「変態。興奮したんだな?」

耳元で囁く。
びくん、と身体が震える。

「ほら。瑠璃は、こういう状況に燃えるね。エムっ気たっぷりだね。」

瑠璃の身体が、ビクビク揺れている。

「待ってろお、すぐに復活するからな。」

その言葉の通り、瑠璃の身体を舐めていたら、すぐに元気になった。
瑠璃を立たせて、後ろから激しく突く。

「いいのか?そんなに?えっ?そんなにいいか?」

言葉で攻めながら、ずっと喘いでいる瑠璃に、激しくする。

「登規さぁん!あーんっ!もっとぉっ!」

「もっと、かよ。もっとか?え?もっと突いてください、だろ?」

耳元で怖いくらいに低い声で煽る。

「もっとぉ!もっと突いてくださぁい!登規さぁん!」

「……たまんねぇ。」

ぐっと勢いよく押し込んできて、瑠璃は仰け反った。

「痛くないか?大丈夫か?」

瑠璃は首を横に激しく振る。
言葉も出せられない。
興奮したチカはまた、ぐいっと押し込んだ。

「これが好きか?あ?こんな強いのが好きか?」

瑠璃は首を縦に振る。

「ここまでとは思わなかった。猫被ってたな……瑠璃。すげえイイ……サイコー。」

今日は本当に、どうしたんだろう?
激しくされたい、もっと。
もっと、もっと。
薄れていく意識の中で、瑠璃はもっと、もっとと叫んでいた。

眼が醒めると、ベットでチカが瑠璃の髪を撫でていた。

「大丈夫か?」

「うん……」

身体が火照っている。
ジンジンしている。
体内に残っている感覚が、とても気持ちがいい。

「どうしちゃったの?お前、今日はスゴすぎだよ。」

「わかんない……何か……スゴい。」

「催淫剤でも入ってたか?」

「何に?」

瑠璃は笑った。

「声、大き過ぎてね。アレ、聞こえたかもね。」

全身が赤くなる。

「ま、もう仕方ない。俺と瑠璃、相当だな、って思われたかな。」

朝、どんな顔して逢えばいいの?

「瑠璃、メチャメチャ良かったよ。」

愛しそうにキスをしてくる。

「あれだけ乱れた瑠璃、ステキだよ。」

あんなの。
前後不覚になるなんて、初めて。

「開発、しようね、もっと。」

「ん……。」

チカに委ねる。
本当の意味で、チカに委ねる事が出来るようになったのかもしれない。
二花の事も全部話せて、楽になったのかも。

水をたっぷり飲んで、抱き合って寝た。
随分とぐっすり寝て、起きるとカーテンの隙間から、光が射していた。
部屋の時計を見ると、もう昼前の十一時。
恥ずかしくなった。
こんなに寝過ごしてしまった。

「ん……。」

抱き合って寝ていたチカが、声を少し出す。
チカが早起きしないなんて珍しい。
こんなに寝ているなんて、普段なら無い。
可愛い寝顔。
目覚めの顔。

「おはよ……。」

緑の眼を開いたチカは、ぼんやりとして呟く。

「チカ、大変!もう十一時よ。」

「えー……?うそっ。」

チカは身体は寝たまま時計を確認して、諦めたように声を出した。

「仕方ない。」

欠伸をする。
ベッドが狭くて抱き合った身体の温もりが寒さを防いで、ちょうど良かったのかも。

「もーいいよ、慌てなくて。仕事無いし。凄かったからかなあ、夕べ。」

「……かなあ?」

瑠璃は赤くなる。

「そやって、すぐに赤くなるトコ、好きだよ。」

抱き寄せながら、そう囁く。

「好きだよ、瑠璃。」

「はい、あたしも。my darling.」

いちゃついた後、チカは起き上がって裸のまま煙草を咥 えながら、二花のレーベルに電話を掛けてみた。
担当と繋がったので、煙草を口から外して、チカは話を進める。
物凄く丁寧に話しているのに、この人、裸なんですけど。
瑠璃は、話の内容と姿のギャップに笑った。

「笑うな。」

通話を終えたチカは、 チャスのくれた深い緑のワンピースを着た瑠璃の頭に手を置いた。
そして、煙草に火を点ける。

「どうだった?」

「うん、レーベル側は承諾してくれたけどね。パパの分の楽曲使用料は向こうで交渉してくれるそうだけど、さ。」

チカはカーテンを開けて、窓の外を見た。
素っ裸で。

「二花個人の分は、そちらで交渉してくださいって。ウチとしては大きな宣伝になるから、会社に入る使用料は低くて構わない、そうで。」

「そう。」

どうしても、二花と実際に連絡を取らないといけなくなった。

「そーゆー時、なんだろうね。」

煙を吐き出し、瑠璃の頭を撫でてる。

「本格的に、さよならって言いたい。」

チカの呟きに、瑠璃はチカの頬に触れた。

「もう、これで想い残す事無く、二花から卒業したい。」

真摯な顔つき。
それが本音。
もう、幻影で惑わすな。
いい加減にしてくれ。
きっぱりと、二花から想いを消したい。
真面目な人だからこそ、こんなに深く悩んでいる。

「言いましょ、二花くんに。さよならって。」

瑠璃の見つめる眼に、チカはキスをした。

「ああ。瑠璃、その時は隣りにいてね。」

「もちろんっ!」

チカはすぐに、二花の公式アドレスにメールを入れた。
他人行儀な文章で、曲を使用したい想いは強く記して。

「さー、早く連絡来いよ!」

ずっと裸だったチカは伸びをして、下着を穿き、シャツに袖を通す。
チカは暑さより寒さの方が強い。
四季を通してチカの様子を見てきた瑠璃は、そう感じていた。
軽く身支度して、階下に降りる。

「かあさん、ごめん。ぐっすり寝てたわ。」

チカはバツが悪そうに、台所の養母の顔を見て謝った。

「いいのよ。ふたりとも疲れてるんだから。家に居る時くらい、ゆっくり寝てなさいよ。」

昨夜の事、大丈夫かな?
ビクビクしながら、瑠璃は後ろから頭を下げた。

「お義母さん、ごめんなさい!こんなに遅くまで。」

「あら、ホントにいいのよー、瑠璃ちゃん。ウチで気を遣わないでね、お願いだから。」

養母は笑っている。

「だね。気ぃ遣うな、ホントに。」

チカは瑠璃の頭をポンポンと叩いた。

「瑠璃ちゃん、お化粧してないと、可愛いわねえ。また、違う綺麗さね。」

今から洗顔しようといた瑠璃は、ノーメイクが恥ずかしくて、焦る。

「いや、ホントに可愛いぞ、お前は。なんも化粧しなくていいって言ったろ?休みの時は、何もしなくてもいいんだ。」

チカは養母の前でも気障な事を言う。
瑠璃は恥ずかしくて、養母に頭を下げ、洗面所に向かう。

「登規、お父さんが言ってたけどね、お昼は、お寿司食べに行かない?」

「寿司、いいねえ。いいよ、行こう。」

顔を洗っている瑠璃はそれを聞いて、人前に出るなら、じゃあメイクしないとね、と、微笑んでいた。

「それと。煙草臭いよ。瑠璃ちゃんに匂いがつくから、部屋の中ではやめなさいよ。」

「はあい。」

チカはバツが悪そうな返事をしていた。


……………………………………………………………………………



「いやあ!登規の?ホントに?まさか、登規とはねえ。」

寿司屋の大将は、瑠璃を見て驚いている。
瑠璃の相手がチカとは思わなかったのだろう。
子どもの頃から家族でよく来ているという馴染みの寿司屋は、瑠璃も安心出来た。

「言わないでよ、誰にも。噂になったら来づらいじゃん。」

チカは笑って言う。

「そうだなあ。でも、言いたくなっちゃうなあ。

 みんなに自慢したいね、森下瑠璃ちゃんが来ましたって。

 瑠璃ちゃんが、あの、登規の嫁さんになるんだとよって!」

「内緒にしてよー。」

気取らないチカもまた、チカの一面。

「おじさん、何でも握っちゃうから、好きなもの言ってね。」

大将は瑠璃に向かって、照れながら言う。

「はい、ありがとうございます。」

「そりゃあ、握るのはニシさんの仕事だろ?金払うのは、こっちだよ。」

「そりゃあ、間違いねえ!今日はかなりサービスしとくよ。登規坊っちゃんの婚約祝いだ。」

チカの養父と大将の会話も楽しい。
瑠璃が現れた時に他の客は誰もいなかったので、大将は臨時に店を借り切りにした。
瑠璃に気を遣ってくれた、と判断する。
最初はまあ、この気持ちに有難く沿おうと思った。

「瑠璃はまず、エンガワに生海老だな。俺は、ヒラメで。」

チカは勝手に頼む。
まあ、それが正解だから、いいわ。
瑠璃は微笑む。
ある程度は、チカはひとりっ子として、吉田家でそれなりに可愛がられて育ったんだ、と判る。
こうして寿司屋の馴染み度合いからしても。

「登規は亭主関白かい?」

大将は聞いてきた。

「そうだと思いますよ。」

瑠璃は笑って答える。

「そんな事?俺がお前に何でもしてるじゃないか。」

チカは慌てて否定する。

「そういう事じゃなくて。チカが全部決めちゃうでしょ?」

「それは―それは、いいんだ。お前の事は俺が決めていいんだ。」

「それが亭主関白って言うのよ?」

瑠璃は笑って、チカの腕に柔らかく触れる。

「凄いねえ、登規は。こんな綺麗な娘に指図出来るなんてねえ。」

大将は笑って、握った寿司を差し出す。
チカの養母と養父は酒を飲みだしたから、つまみを要望した。
チカが車で連れ来たからだ。

「マネジャーが手を出したらいかんだろ?」

大将はからかってくる。
それはチカには実は、重い十字架である。
本来なら、手を出してはいけない商品。
最初に、商品には手を出さないから安心しろ、といったくせに、気持ちを止められなかった。

「だよねー!謹慎と減給処分だったしね!」

チカは笑って、おどけてから、お茶を飲む。
減給処分だったのね。
瑠璃には初耳だった。
クリスマスがあって誕生日があって、引っ越したあとの減給処分は最悪だったろうに。

「俺は働きがいいから、大丈夫だよ。一ヶ月の、だし。」

小声で瑠璃にそう言い、頬を撫でる。

「仲がいいねえ。」

ふたりのスキンシップに、大将はからかう。

「そりゃあ、仲が良くなきゃ、困るよ。いつも一緒なんだから。」

チカは寿司を頬張って咀嚼してから、さらに言う。

「俺たちは、ラブラブなんだ。」

恥ずかし気もなく言うから、瑠璃は照れて赤くなる。

「登規はイギリス出身だからか、表現がストレートでねえ、何かと。」

養父は笑って言う。

「この仲の良さに当てられてるよ。」

お義父さん、昨夜の声、聞いちゃいましたか?
それとも階下に響きましたか?
瑠璃は、もっと赤くなった。

大将はチカの少年時代の事を語ってくれた。
初めて店に来た時は、余り日本語が喋れなくて、片言だった事。
それがどんどん、あっという間に日本語が上達した事。
全般的に、おどけやすい事。
寿司ネタの漢字を憶えて得意気に読み上げていたが、書けば、のたうち廻ったミミズのようだった事。

「俺、未だに書くのは苦手だよ。ヘタな字!」

そういえば、チカの書いた日本語を見た事がない。
英文は普通の字だったが。
わざわざ書いてもらわなくてもいいけれど、日本語がどれ程のものか見てみたい。
チャンスはある。
それは、婚姻届。

酔ってきた養父が饒舌になり、語ってくれた。
当初、チカは白米を出しても、美味しくない、と、なかなか食べなかったようだ。
味をつけたり炊き込み飯にしたり、いろいろ試したが食べず、困った末に、この寿司屋に連れてきた。
寿司は食べ慣れていたので、喜んで手をつけた、というのが始まりらしい。
チカが寿司が好物だというのは、ここに所以があると感じた。
想い出の食べ物、なのだ。

しかし、家では今でもずっと白米を食べないそうだ。
それだけ余所では気を遣っている、という裏目でもある。

「俺、白米の時、給食、ホントイヤでさ。白米と牛乳の組み合わせって何?サイアクって、ムカつきながら、最初にご飯だけ食べてたよ。」

「あたしはご飯は好きだけど、確かに牛乳のセットは変だものね。」

でも、給食が懐かしい。
食べられなくなって、もう、一年になる。
あれはいきなりだったから。
最後の給食も、格別に味わって食べてない。

「ねえ。やっぱりご飯、イヤなんじゃないの?」

チカの腕に触れる。
何回も白米を出しているけれど。

「お前のは、いいんだよ。瑠璃の作ったのは。美味いよ。」

真っ直ぐ見つめられる。
薄い緑の眼が輝いている。

「そう?」

「そう。」

瑠璃は照れて、赤くなった自分の両頬を押さえた。

「いや、ホント、仲いいねえ。妬けるねえ。」

大将は笑っている。

「俺ぁ、瑠璃ちゃんはテレビとかで見る限り、もっと気の強い娘かと思ってたよ。」

「気は強いよー。でも、俺には従順だからさ。」

何て事言うの!
瑠璃はさらに赤くなって、チカの肩を軽く叩く。

「アハハ。可愛いなあ。」

大将も小僧も、養父母も笑っている。
瑠璃はもっと恥ずかしくなって、俯いてしまった。





……………………………………………………………………………


夕食をご馳走になってから、登規の実家を出発した。

「緊張したわ。」

「緊張しなくなるといいな。とうさんもかあさんも裏がないから、安心して。

 あの人たち、俺の子育てには相当苦労したから、今更、裏なんか無いよ。」

チカは笑って運転をしていた。

「楽しい家庭ね。」

「だろ?俺はあの家で、一家団欒っていうのを初めて知ったよ。」

それまでは家族別々で食事をするのも珍しくはなかったから。

「俺はしあわせものだね。いろんな家庭と家族を体感出来てる。」

その表情の中には、寂しさも含まれていた。

「父のさ、実の家族と、父の家で一緒に食事する事とか、何回かあったんだ。父以外のみんなに気を遣われてるっていうのも、よく判るから。」

チカの腹違いの兄と姉は、年末にテレビで見た。
チカの父親の受賞で、インタビューを受けていたから。
特に兄の方は、面差しがチカと、とても似ていた。
父親の正妻は、落ち着いた感じの上品で綺麗な女性だった。

「瑠璃の家族も大好きだよ。」

打って変わって、嬉しそうに笑う。

「瑠璃は、しあわせな家庭で育った。」

「そうね。それは、とても思うの。」

パパもママもヘンだけど。
両親が芸能人だし、普通の家庭では無いけれど。
あたしは、とても愛されて育った。

「今度は、瑠璃のおばあちゃんにも逢いたいね。」

「そうね。近くにいるのに、逆にしばらく逢ってないなあ。」

去年、転校した後に、挨拶に行ってから逢っていない。

「頻繁に逢わないとね。」

「そうね。」

パパに顔立ちが少し似ている、凛とした女性。
女手ひとつでパパを育て上げた人。

「瑠璃の友だちにもね、逢いたいよ。」

「逢ってどうするの?」

瑠璃は笑った。
ギャルと遊ぶの?
この冬、瑠璃には時間の余裕もあるし、本当は麻里たちと遊びたかった。
しかし、気づいたら周りは受験生だった。
遊びに誘ったら、合格してからにしてー!と言われた。
なかなか、都合がかち合わないものだ。
春には瑠璃が忙しいのだし。

「あたし、やっぱり、高校行かなくて良かったと思うの。」

「うん?」

チカは運転しながら、横眼で瑠璃の表情を確認する。

「行っても、通うのムリだったわ。」

「そうかもね。」

チカは納得したように頷いた。

「高校より仕事!って決めたから、良かったかもね、瑠璃の場合。」

たから、ショーモデルの道が拓けたのかもしれない。

「中学も結局、卒業まで、そう通えないしね。」

「そうだね。卒業式もなんとか、な感じ、だね。」

帰国して、卒業式に出て、また、しばらくしたらロンドンに向かう予定だ。

「今年はバタバタする、ね。」

「あっという間に結婚式になるのね。」

「新婚旅行、決めた?行き先。」

チカとこんな事、何気に話していられるのが、いい。

「本当は国内がいいんだけど。」

「難しいね、国内だと何処行っても騒がれて、リラックス出来ないよ?ずーっとのーんびり会員制のリゾートホテルとかが関の山かな。俺も日本国内、巡りたいんだけどねー。」

だから、結局、海外になる。

「意外に香港とか行きたいかも。」

「いいね。俺もずっと行ってないよ。」

その時、チカの中で閃いた事があったらしい。

「―うん。そうしようかな。」

「え?」

「練っとくね、案を。」

楽しみな新婚旅行になる、と感じた。

途中でパーキングエリアに寄った。
混んでいる時間帯を避けて夜に出発したから、人は疎らだった。
瑠璃は帽子を被って、足早にトイレに行く。
チカはトイレの前で待っていて、俯いてスマートフォンを操作していた。
瑠璃の姿をチラッと確認して、眼を上げる。

「二花から、返事が来てた。」

「そう。」

瑠璃は微笑んだ。
珈琲を買ってから車に戻ると、チカは画面を見せてきた。

【 吉田 登規様

 この度は、お世話になります。
 ご依頼の件、こちらこそ喜んで承諾させて頂きます。
 私の宣伝にもなりますので、金額は低くて構いません。
 また、後日詳しく、ご提示を宜しくお願い致します。

 嵩原田 二花 】

これまた、他人行儀なメールだった。

「面倒くせえな。奴にマネジャーがいれば、ラクなのにな。」

チカは溜め息をつく。

「まあ、とにかく良かったじゃないの!承諾してくれて。」

「まあ……ね。」

チカが懸念しているのは、二花と直接逢わないといけなくなった事。

「瑠璃も行くから、ね。」

「うん。」

チカは厳しい顔をして頷いた。



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「ふうっ……はぁん。」

「そうだよ、瑠璃。巧くなったね。」

チカは下から瑠璃の腰を支えている。

「綺麗だよ、瑠璃……スゴくイイ。」

ジュエリーブランドとの打ち合わせ後、チカの家に来た。
そろそろ、ゆっくりと、この家に瑠璃の物を置いていきたかったのもある。
普段使わない荷物を運びつつ。

「あっ、あっ、あっ。」 

長い髪が揺れる。
汗を掻いた身体に纏わりつく。
良すぎて、おかしくなる。
瑠璃は仰け反った。

「俺もいくよ。瑠璃、いくよ。」

「はあっ、んーっ、」

真っ白だ。
気がついたら、マットの上に横になっていて、チカに頭を撫でられている。

「瑠璃、スゴいね。最近、スゴいよ。」

「あたし……ヘン。」

これまでの比ではない。

「ヘンじゃないよ、スゴくイイ。開発すると、こんななんだね。」

チカも驚いて、悦んでいる。
前よりもっと、瑠璃は求めてくるようになった。

「もっと開発したら、どうなるかな?」

「良すぎて死んじゃう。」

瑠璃は恥ずかしそうに、チカの胸に顔を埋めた。

「死なないよ。大丈夫。」

「判んないくせに、チカには。女の気持ちよさは。押し寄せてきて、スゴいんだから。」

「そうだね。」

チカは笑った。

「おかしくなりそうに、なるの。」

「なっちまえ。おかしくなったら、責任取ってやる。」

「どうやって?」

「どんな事したって、瑠璃を一生守るよ。」

愛しそうに瑠璃の頭を撫でている。
その時、チカのスマートフォンが響いた。
連絡先によって振動を変えているらしい。

「ごめんね。」

瑠璃に断ってチカは立ち上がり、床に散らばっていたスーツの上着のポケットから、スマートフォンを取り出して会話し出した。

「はい、吉田です。はいーはい?」

全裸で右手は腰に当てて立っている。
後ろから見る、その様子がおかしくて、瑠璃は笑いを堪えた。

「そうですか。仕方ありませんね。また、後日、ご都合宜しい時間を教えて下さい。いえ、こちらこそ。」

通話を終えて、チカは瑠璃に振り返った。

「瑠璃。明日の打ち合わせ、無くなった。」

「え?」

「担当の人の祖父が亡くなったんだって。申し訳ありませんけど、って。それは仕方無いからね。」

「そう。」

明日はフリーか。
瑠璃がそれを閃く前に、チカはもう、閃いたらしい。

「明日、名古屋、よ。パパの。」

「うん。」

チカはもう、電話を掛けていた。

「あ、パパ。今、大丈夫ですか?はい、ありがとうございます。」

チカはマットの上に座って、瑠璃の髪を指で弄り出す。

「明日、名古屋、二席空きませんか?そう、俺と瑠璃。急に仕事が無くなったんで。」

パパに直接頼んでいる。

「はい、お願いします。I love you, darling.  」

通話を終える前に、チカはまた、ふざけた。

「確か満員だったと思うけど、空いてなかったら、横からでも見てろって。席の有無が判ったら、連絡してくれるって。」

「そう。」

ステージの横から見るって最悪。
最初から、二花に存在を知られるから。
でも。

「まあ、何にしろ、明日は名古屋、ね。」

「だね。で、これで、二花に話が出来る。」

早く二花に連絡を取って、逢う日を決めないといけなかったが、この数日、怖くて迷ってしまっていた。
逢って、また気持ちが燃えたら、どうしよう。
それが、怖かった。

瑠璃は、そのチカの迷いを知っているから、早くしなさい、とは言えなかった。
チカは臆病だから。
真面目だから、アレコレ考えて動けなくなる。
それを、判っているから。

「公演後に楽屋行って、挨拶しよう。で、二花と交渉しよう。」

「うん、そうね。」

微かに震えている指。
瑠璃は、その指を握る。
自分の唇に、その指を当てる。

「あたしがいるわ。」

「ああ。」

大丈夫よ、あなたは。
あたしとの結婚式、見えるでしょ?
すっかり妄想出来るでしょ?

ああ、よく、見えるよ。
瑠璃の純白のウエディングドレス姿が。

自分も怖いのに、チカを守ろうとしている、その可憐な瑠璃。
チカは愛する瑠璃の、その顔を見つめ、大事そうにキスをした。

「婚約一周年おめでとう、瑠璃。」

「ありがとう。チカもおめでとう。おめでとう、は日本語間違いかもね。」

瑠璃は笑って、チカにキスを返した。




トーチカ~瑠璃シーン⑤中編4に続く


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激しくなっていく瑠璃。
仕事に対してエネルギーが高まるときは、そうなのかなあと、人生の流れを傍観してると、そう思います。

この娘が生き急ぐ意味というのは、後編で本人たちが話してます。

次回はようやく、椎也の名古屋ライヴです。

トーチカ~神楽シーン⑤中編
のドSちゃん神楽にシンクロします。

(この子は大胆だけど、とても健気な娘ですよ。)

 

チカの浮気者ー!の場面が
果たして、チカサイドではどうなのか?

お読み下さり、真にありがとうございます。