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トーチカ〜瑠璃シーン⑥中編2

小説です。

人に言えない嗜好や秘密、官能
人間はそれをどう思うか
自分でどう対処していくのか。

瑠璃シーン⑥のキャッチコピーは、
俺とお前の攻防戦。

トーチカ〜瑠璃シーン⑥も中編に入りました。
神楽シーン⑥中編1からの流れの瑠璃側です。
事件事件多発的で、ごった煮のように大勢の人が出てきます。
これまで噂でしかなかった人たちも登場。

瑠璃シーン⑥中編は、
不貞、不倫、禁忌の闇を傍観する旅。

神楽シーン⑥よりも実は闇を見る!
笑いと呆れが混在としている脱力系。

トップモデルとなった瑠璃の真骨頂とも言える、瑠璃シーン⑥。
瑠璃の魅力、瑠璃チカの結婚式、そして妊娠までを書きます。

トーチカのこれまでの話のリンク


トーチカ~瑠璃シーン⑥中編2

「瑠璃、いい、いい!もっと、腰廻せ!」

瑠璃の揺れる 乳 房を摑み、揉 んでいる。

「あっ、あっ、氣持ち……いいっ!氣持ちいいっ!」

声を出すなと言ったが、そのチカの方が喘 いでいる。

「瑠璃……スゴっ。俺、ヘンになる。」

チカは恍惚の表情を見せた。

「なん……What? これ、何?」

チカの口端から涎が垂 れていく。
口の間にタオルがしっかり挟まって喋れない、苦痛にも似た瑠璃の快感の表情を見ていると、余計に興奮した。
瑠璃の中は、あちこちから吸いついてくる。
瑠璃が回転させているから、吸いつきが離れても、他の場所でくっついてくる。

俺は、この女を支配している。
この美女は、俺の言いなりだ。
俺の言う事なら、なんでも聞く。

その達成感がチカの身体、脳、全てを駆け巡る。

身体を起こし、一回抜いてから、瑠璃を後ろ向きにさせた。
腰を摑み、すぐさま突 いていく。

氣持ちいい。
この女も、最高に善 がっている。
うーうー唸って鳴いている。
泣き声が聞けたら、良かったのに。 

尻を つき出して、もっと激しくして、とねだっている。
だから、奥まで、ズン ズン と突 いてやる。
ああ……いつもより尚、氣持ちいい。

その滑らかな柔らかい尻の形と、ぎゅっとくびれたウエスト、綺麗に窪んだ脊柱の照っている背中、乱れている長い黒髪、そして揺れまくっている豊満な 乳を後ろから見ているだけで、きっと達せられる。

そして突 きやすい。
今日は、とても突 きやすい。
奥にぴったりと 当たる。
深くまでヒク ヒクとした彼女を感じられる。
彼女も、とてつもなく善 がっている。
狂ったように頭を振って、唸っている。
中が うねりまくっている。

出る時になって、気づいた。

「あ……ごめん!あっ、あっ、あーっ!」

どおりで、とてつもなく氣持ち良かった筈だ。

「ごめん、瑠璃、ごめんっ!」

すぐに瑠璃の腰を下ろさせた。
無我夢中になっていて、瑠璃を膝立ちさせていたのだ。
口の、すっかり濡 れたタオルを外す。
瑠璃は、はーはーと息を荒くして、放心していた。

「ごめん!瑠璃。」

その膝を手で擦る。
瑠璃は眼を見開き、放心したままだった。
瑠璃が 尻を つき出した 膝立ちの バックは、立ってよりも、とても当たり処が良かった。
角度がぴったりとくる。
瑠璃も、相当良かったのだろう。
元から瑠璃は、この体 位でしたがっていたのだ。

どうしよう、癖になる。
今までで最高に興奮した。
チカはぶるっと震えてから瑠璃から離れ、瑠璃を仰向けにした。
そして、優しくキスをする。

唇、頬、顎、額。
彼女の何処もかしこも、愛おしい。

「俺、訳判んなくなっちまった。ごめんね。」

ビジネスバッグから、いつも持ち歩いているボディクリームを取り出す。
少し赤くなっている膝を、念入りにクリームで撫でていく。

「いい……いい、スゴく、よかった。」

瑠璃はハーハーと息が荒いままで、ようやく言葉を発した。

「おかしくなりそうだった。あのまま、壊されたかった。」

「壊しはしないケドね。」

チカは瑠璃の汗ばんだ頭を愛おしく撫でまくり、抱きしめる。

「俺もスゲえ良くて、激しくなっちまった。ごめんな。」

「いいの……野獣なチカが好き。あの激しさ、堪らないの。」

うっとりとしている瑠璃だ。
病みつきになったのだろう。

本能に任せて、より獣へ。
頭が指令するよりも先に身体が動く。
その、氣持ちよさ、快感。

チカは瑠璃の顔中に唇を這 わしながら、それでいいのだとも感じていた。
ビジネスに頭脳戦は何より必要だが、男と女の関係は何もかも忘れて、こんな獣になった方が開放感が強い。

ただ、何もかも理性を放棄すると、瑠璃に避 妊無しで 挿 入してしまう。
それはまだ、してはいけない。
そして、瑠璃は世界に立つモデルだ。
瑠璃がどれだけ望もうと、見える身体の部分を傷つけてはいけない。

その垣根が有ろうと無かろうと、チカには到底、瑠璃をベルトで打ち据える、なんて事は出来ないと氣づいている。
そして瑠璃は妊娠と出産をしたら、そのマゾヒズムも少し変わるかもしれないと考えている。

「瑠璃たん。」

「ん?」

瑠璃もチカの頭を抱え、キスを返してくる。

「ほんと、極たまーに、さ。撮影前はダメだよ。こうして後ろからして、いい?」

陥落した、この快楽に。
絶対に禁止をしていた、この体 位の氣持ち良さに負けた。

「いいに決まってるじゃないの!してっ!」

瑠璃は嬉しそうにチカの首に抱きつく。

「うん。スゲかったもんな。瑠璃のあんな乱れ具合。堪らねえ。」

「だって、いちばん犯 された感じがするの。」

「俺も征服感が、めちゃ くちゃ強い。やっぱりマウンティングだけあるよ。」

ふたり抱きしめあい、余韻を味わっていた。
ドSとドMの要望が、ぴったりと合う体 位なのだ。

「したい……チカ、もっと、したい、後ろから。もっと、頂戴。」

瑠璃は恍惚とした表情で、チカにキスをしてくる。

「今日はダメだ、流石に。」

「明日は?」

「瑠璃たん。日本にいると取材が多いんだよ。明日も午後から情報番組のV撮りなんだからね。」

チカは言い聞かせるように、瑠璃の頭を撫でる。

「これからもっと、脚のケアが必要ね。」

しかし、瑠璃はスルーする。
きっと最中にドM 懇願をされたら、チカは焦らしながらも、瑠璃のおねだりを叶えてしまうと知っているのだ。

今まで、どれ程、瑠璃に懐柔させられたか。
チカは、ふっと笑う。

瑠璃に舌を絡めキスをして、ボディクリームを手のひらで温めてから、脚のマッサージをしていく。

「美しい脚だ。」

その左脚を持ち上げ、足の甲にくちづけをする。
そのまま、ふくらはぎに唇を移していく。

「この美しく長い脚に、俺は蹴られてるって思われてんだろうな、世界の男に。」

「いやだわ。」

そんな風に、瑠璃が女王さまと思い込まれている。
瑠璃には、そこが難点だった。
どうせ実はドMだなんて、接近して触れた男は氣づくだろうが。

「そこが瑠璃の魅力だよ。もし、瑠璃がしたいなら、俺を蹴ればいい。だけど、力を込めてはやめなさい。この柔肌が赤くなる。」

「ふ……うんっ、」

その唇の動きにゾクゾクとする。
太腿の内側にまで行き、膝の裏側に戻っていく。

「あ……やっ、舐 めて、ここ。」

瑠璃は自分の指で両側に拡げた。

「瑠璃、俺は脚のケアをしてるんだよ。」

焦らして、また足の指を舌でチラチラと 舐 め上げ、口に入れて 吸った。

「あうんっ!」

「美味しい。瑠璃は何処も美味しい。身体中が性 感帯なんだよね。」

びくびくと震えている瑠璃を、チカはよく観察している。

「触ってないのに、ほら、もうこんなにしてるね。」

瑠璃が指で 拡げている そこから、じわっと溢 れ出てくるのを、足の指を順番に吸いながら見ている。
そして足の裏をちらーっと舌で 舐 め降ろした。

「ああっ!」

「そんな声、出すな。」

出すなと言われても、出てしまう。
チカは苦しくない程度に、口にタオルを詰めてきた。
これも、ゾクゾクとする。
瑠璃はそれだけで、ぶ しゅっと液体を散らして達した。

「あーあ。瑠璃、汚しちゃったよ、布団。スゴいね、こんなに吹くんだ。実家なのに。」

明日は早朝に起きて、汚したタオルとシーツを洗わねばと、瑠璃は小刻みに震えながらも現実的に頭の中で模索していた。
客用の布団を使ったから干すのは当然だし、何も不思議はないだろう。

「このドMには、相当、お仕置きが必要だな。」

「ううっ!」

お仕置き、してください。
焦らしてもいいから、いっぱいお仕置きしてください。

喋れないから、そう頭の中で懇願をした。

「こっちの穴も、ヒク ヒクしてる。欲しいんだろ?瑠璃、ここに欲しいんだろ?今日は、ここはダメだよ。ああ、でも本当は、今すぐぶち 込みてえ。ズブ ズブ 挿 れてえ。」

その言い方も、瑠璃には刺激的だ。
さらに潤 っていくのが判る。
チカは今度は右脚を上げてマッサージしながら、舐 めていく。
焦らされながらも、幹也にダメだと禁止されたsexを、この夜は結局二回もしてしまった。

チカ曰く、これはsexじゃない、make loveだ、と切り返されたが。

…………………………………………………………………………

頭にストールを被り、大きなサングラスをして日除け対策をした瑠璃は、車の中で昨夜の禁じられた遊びを脳内で反芻して、うっとりとしていた。

「また、うるうるしてるんでしょ?」

横でサングラスを掛けたチカは運転しながら、冷静にそんな瑠璃を観察している。

「ま、いいね、そのうるうる具合。瑠璃がより美しく見える。それ以上はエロすぎだから、ダメだけどな。」

「あたし、おかしいのかしら?」

いつも潤っているような氣がする。
最近は乾いている時がないくらい、中が湿っている。

「感じてないのに開脚すると、すぐに、く ちゃって、音が密かに聞こえるの。」

朝や日常のストレッチで脚を拡げると、溢 れてきそうで怖いのだ。

「いいね、その湿り具合は。女には大事な事だよ。」

「そうかしら?」 

「元来、女はそんなものなんだよ。自浄作用だし、でないと病原菌を入れてしまう。それに、」

チカはニヤッと笑んだ。

「その方が瑠璃は、より美しく艷やかだ。撒き散らしたフェロモンに男は惹きつけられる。」

「男の人にモテるのはいいんだけど、でも、」

チヤホヤされるのは嬉しい。
しかし、アプローチをかわすのが厄介だ。

日本に帰ってきて、取材を受けていると、前よりも男の眼線が自分に集中してくるのが判る。
チカも傍らにいるし、海外の男ほどあからさまに積極的に攻めてはこないが、それでもチカがクライアント側と話している時など、警備が手薄になると瑠璃に近寄り話しかけてくる。
そこを女王さま的にあしらうのだ。

「惹きつけた男の中で、誰とやりたい?」

チカの直接的な質問に、瑠璃はドキッとする。
身体が震えた。

「瑠璃たん、これは妄想の話だ。現実的に捉えなくていい。今の時点で、誰となら、やりたい?」

妄想。

「なら、俺の妄想を話す。」

チカは右手で運転しながら左手を瑠璃に差し出す。
瑠璃は当たり前のように飴玉の包装を裂いて、チカの口の中に放り込んだ。
それが当たり前の疎通になっている。

「ロンドンの近所のchocolate shopの兄ちゃん、アランを抱き寄せて、驚いている口をいきなり唇で覆いたい。」

「うん、ちゃんと三次元の男にも眼をつけてるじゃないの。」

瑠璃は、にっこりと微笑む。
アランはプラチナブロンドの二十代後半に見える、背の低めな、顔の綺麗な好青年だ。

「だから、あのお店に通ってたのね。」

「いや、美味いし。まあ、眼の保養になるケド。」

チカは伸びた前髪を左手で弄 っていた。

「最初は抵抗しても、すぐに舌を絡 めて、もっととキスをせがんでくる。俺は男の愛し方を耳元で囁いてやるんだ。どうだ?穴、俺に差し出せるかって意地悪に聞いてやる。恥ずかしがっている下半身を 剥 いて、口で 襲 ってやるんだ。もう、ギチギチなそこを、デロンデロンに舐 めてやる。アランは可愛い顔を火照らせ、喘 いでくる。挿 れてくださいって、懇願してくるまで出してもずっと、舐 め続けるんだ。」

「チカ、大好きよね、そういう妄想。」

実際には、チカは自らスキャンダルになる事はしない。
今や瑠璃の恋人として、認知されているのだから。

「妄想の中でも、調 教は俺のライフワークだ。」

チカは自信満々に宣言した。

「そんな妄想、瑠璃も好きだろ?話せよ。」

そうやって命令されると、子宮がぎゅんっと鳴るのだ。
最初から命令してきたらすぐに話すが、焦らすからこそ、なのだ。

「あ……たしは、男装のリックに組み伏せられたい。あたしがダメって言っても、こんなになってるのに?って、構わず愛 撫してくるの。」

「うん。女装には靡かないんだね。」

どうせ、裸になれば、それも関係ない。
巧いキスでも我慢は出来た。
ただ、押し倒されたら女装の時でも、もうそのまま許すだろう。

「他は?」

チカは飴玉をガリガリと奥歯で噛んでいる。
あの歯で咀嚼されたら、瑠璃もチカの中で粉々になる。
そんな想像をしていた。
あなたに、食べられたい。
もし、この身体が死んだら配偶者が食してもよいと、法律が出来れば良いのに。

「笠田さんね。笠田さんなら、ただ、焦らされて焦らされて、ようやくって流れがいいわ。」

「焦らすか一氣喰いか、どっちかだろうな、笠田さんは。」

チカはまた左手を出して、飴を要求した。
また、違う味の飴を口に入れてあげる。

「あの人も、かなりドSだと思うよ。」

「あたし、ドSにしか興味ないわ。」

意地悪をされながら、sexをしたいのだから。
だけど、チカに出すようには全てのマゾヒズムを出さない。
程よい痛みは、チカが与えてくれるから、いい。
他の男に望むのは言葉攻めと、焦らしと、野獣度が高ければいいのだ。

「こんなドM、相当嬉しいと思うよ、ドSにはね。震えながら、溢 れさせながら、恥ずかしい言葉を口にしてくれるから。支配欲、堪んねえくらいに満たしてくれる。」

「満たされてる?」

「もう、ビン ビンに。だけど、もっと支配したくなるからな。あーくっそっ、元氣な若い俺が憎い。」

そこはもう膨らんでいたのだ。

「瑠璃、今、しゃ ぶれ。」

チカのその命令に、じゅ んっと濡 れてくる。

「明るいのに?見られるのに?運転してるのに?」

上からとか、横からとか、通り過ぎる車に目撃されてしまうだろう。
第一、危ない。

しかし、瑠璃はチカのベルトに手を伸ばした。

「ちょい待てっ!幾らなんでも、冗談判れよ!」

チカは、その手を優しく払った。

「だって、命令したのに。」

瑠璃は残念そうに口周りを舌で舐 めた。

「こんなん見られたら、それこそ追放だぞ?瑠璃、いい加減、判れよ!」

「判らないわ。冗談と本氣の境なんて。チカに命令されたら、瑠璃はそうするしかないの。」

瑠璃はチカの肩に手を置き、運転してる横顔のチカを覗いている。

「くっそっ!この天然っ!」

チカは、小声の英語で呟き出した。
どうやらマザーグースを唄っているらしい。

「ちと悲しい唄で、萎らせた。」

「うん。聞いてるだけで悲しい。」

メロディはさわやかな分、歌詞の物悲しさが際立つ。

All the birds of the air 
Fell to sighing and sobbing 
When they heard the bell toll
For poor Cock Robin. 

「駒鳥とミソサザイは番いなんだけどね。まあ、その余話も悲しくなるな。殺鳥は不倫のもつれか?」

チカは眼端に涙を溜めて、前を見たまま運転していた。
本当に、この曲を悲痛に感じるのだな、と判る。

「とゆーくらい、悲しくさせないと萎 えないんだ。いいか、瑠璃。簡単に俺を勃 てさせるな。」

「妄想話をしろって言ったのは、チカなのに。」

相変わらずの傍若無人振りだ。
そこが好きなのだが。

「帰ったら、しゃ ぶらせるからな。イヤだと言っても、突 っ込むからな。」

「そんなの……。」

わざとなその言い方が、瑠璃を欲情させ、モゾっと動かせる。

「そうしよう。ムリに突 っ込むから、瑠璃、抵抗しろよ。」

またシナリオが出来たらしい。
チカ専用のAVを作ったらいいのに、と瑠璃は考える。
監督と男優兼で、女優は瑠璃だ。

なんにしろ、そうやって煽りたかったのだ。
テレビ番組の収録だから、余計に瑠璃の動きのある艷やかさが必要なのだ。

情報番組の一コーナーで、瑠璃はロンドンでの生活やモデルの仕事をインタビューされる。
こういう繰り返しが、来年には特集番組が組まれるかもしれないというチカの企みを誘う。
チカが敢えて、そう口にするなら、きっとそうなるのだろう。

丈の短い緑のドレスを身にまとった瑠璃は、華のように微笑みながらインタビューを受けて、楽しそうに答える。

極普通に生活して調理をするし、和食も作る事を話す。
少食なので特に食事制限をしないが、炭水化物よりもたんぱく質を摂るように心掛けさせられると、チカの存在を軽く匂わす。

チカの撮った、ロンドンでの生活の写真も、風景と瑠璃の何枚かが映像に映されている。
パリに行った時の写真も紹介された。

チカのファッション雑誌での連載も、瑠璃の私生活が垣間見れて、且つチカが瑠璃をとても愛していると文章から滲み出ているとのだと、好評な事をナレーションで後から入れるそうだ。

とても幸福で楽しい、そしてモデルとして刺激的な一面も見せる。

「結婚に向けて、心境の変化はありますか?」

そう問われ、瑠璃は益々にっこりとする。

「そうですね。前よりもさらに実感が湧いてきて、ドキドキとしています。今は楽しみしかありません。」

それが本音なのだ。
結婚に対する怖さや抵抗感はない。

「結婚したら、芸名も苗字を変えられるのですよね?」

「ええ、そうです。そうすると、また感じも変わりますね。苗字を呼ばれて、自分だと氣づくかしら?」

うふふ、と笑む。
まだ、吉田の名前は出せない。
吉田瑠璃になるの、とは世間には言えない。
業界では、既に認知されていても。

指に着けているエンゲージドリングもアップで撮られる。
この時、チカはとても恥ずかしかったという。
芸能人の婚約指環の高額さと比べられたら、とても顔を出して生きていけないと嘆いていた。

チカは一般人だから、誰も芸能人と比較しないわよ、と慰めておいた。
実はそう一般人ではないが、今はサラリーマンチカなのだから。

結婚指環に関しても、結婚情報誌の結婚指環制作の連載の話を振られた。

「ええ、とても楽しいですね。結婚指環が出来ていく過程って。デザインなどは殆ど、お任せしていますけれど、彼に。」

その瑠璃の嬉しそうな顔が可愛いとアナウンサーに囃された。

「あの。あたし、生活の殆どは、彼に任せています。どうも、かなり抜けているみたいです、あたし。」

その、しっかりとした性格に見える外見と反比例したような天然さは、瑠璃と実際につきあわないと判らないだろう。
だから、友人は瑠璃を心得ているのだ。

コイツは、傍にいて何かと世話してやらないと。
そう思われているのだ。

収録が終わり着替えてから、瑠璃はデスクに赴き、関係者に挨拶をした。
忙しそうだが、誰しもが美女の訪問に喜んでくれた。

ふと。
離れた場所から視線を感じた。
遠目で密かに確認すると、ひとりの男が瑠璃を観察していた。
四十代後半から五十代頭くらいの年代だろう。
身長は瑠璃と同じくらいか、少し低めか。
程よい筋肉質だと見て取れた。
頭には処々、白い物がある。

いや らしく絡 みつく程ではないが、じいっと観察されていると判る。


ソイツは、氣をつけろ。

頭に、そう響いてきた。
チカがそんな警告をするくらいだ。
警戒アンテナを立てておかないと。

歩みながらも、その男に距離が近づく。

「吉田くん、久し振りだね。」

男はチカに声を掛けてきた。

「ご無沙汰をしております。後藤さんは、お元氣でお過ごしですか?」

チカは会釈して、そう返した。
顔を上げた眼は笑っていないが、声音は営業用だ。

瑠璃もチカも、舐 め廻すように見られている、と判る。
蛇みたい。
蛇は美しいが、比喩するならば、蛇のようなしつこさと粘着さを感じる。

「ドラマに入るから、余り元氣ではないかもね。まあ、それなりに楽しく生きてるよ。」

彼はそう言いながらも、口に煙草を挟んだ。
その銘柄に、瑠璃はドキッとする。

この人だ。
判った。
この人だ、間違いなく。
チカのこの、毛羽立ったような空氣感からも読める。

「お初にお眼にかかります、森下さん。後藤です。あなたのお母さんとは、何回かお仕事をご一緒させて頂きました。」

後藤は右手を差し出す。
瑠璃は、にっこりと微笑みながら、その手を握らなかった。
それは、ムリ、だと、全身の鳥肌が告げていた。

「初めまして、森下瑠璃です。その節は母が大変お世話になりました。後藤さん、ドラマのプロデューサーさんでいらっしゃる?あの後藤さんでしょうか?」

瑠璃は艶やかな笑顔で、そう質問をする。

「ええ、そうです。」

母とも、そんな接点があった。
瑠璃はゾクッと背中に冷たいものを感じていた。

ただ、しかし、悪い人ではない筈、なのだ。
でなければ。

「その片割れとは長いつきあいでしてね。今でも、いい飲み友です。」

二花はまだ、この人と飲んでいるのだ。
そう話していたではないか、チカの誕生日に。

だから、決して悪人ではない。
ただ、悪趣味、なのだ。

「彼は酔うと、とても親父臭くなる。ツマミにイカのゲソが大好きなんだよ。可愛い顔をしてゲソを囓りながら、同じ話を繰り返す、説教をしてくる。説教されるのは、自分も同じなのにね。」

別に瑠璃もチカも攻撃したいのではない。
ただ、悪趣味だから、瑠璃とチカをからかいたいのだ。
かつての二花の恋人を。
それ以来、遊びを断った二花の、その直前の恋人ふたりを。

「そして、抱きついてくるんだ。可愛いよ、とても。だが、彼はとても匂いに敏感だ。拭ってもね。記憶を失っても痕跡を残すから、いたずら出来ないのは残念だがね。」

酔っ払わないでよ、二花くん。
瑠璃は神楽に、心底同情をした。
決して男遊びをしないでも、酔っては、この男に密かに抱きついたりをしているのだ。
そして、泥酔した時にいたずらをされた事もある、という事だ。

「吉田くん、忙しいのに彼のマネージャーもしてるなんて、大変だね。」 

後藤は嬉しそうにチカを眺めていた。

「いえ。僕は彼をヨーロッパで売りたかったので本望です。」

チカは顔は営業スマイルだが、眼が怖かった。
褐色がかった深い緑を見せている。

「まあ、そうだろうね。判るよ。どんな苦労をしても、彼はそれだけの価値がある。ヨーロッパだね。確かにヨーロッパだ。クラシックから入ったジャズ好きに、ハマるね。」

確かに、マネージメント側としては、魅力的な一品だ。
音楽の専門的な話は判らないが。

「森下さん。私は是非、あなたの特集を組みたいですね。ご結婚後になるかと思いますが、森下さんの特集番組を作らせて貰えませんか?」

この男が。
二花の、かつてのセ フレが。
しかし、絶対的に腕は立つ。
それは本能で判る。

「そういう話は、マネージャーに任せてあります。」

瑠璃は、再度にっこりと笑む。

「吉田が判断します。あたしにとって、是か否か、吉田に全て任せてあります。お仕事のお話は、吉田にお願いします。」

「成る程。流石、世界の舞台に立てる人だな。」

後藤は嬉しそうに頷いていた。

「では、吉田くん。どう、判断します?瑠璃さんに密着させて頂きたい。結婚後のロンドンコレクション前からは如何がでしょうか?」

後藤の頭の中では、既に絵コンテが出来上がっていた訳だ。

「金額によりますね。コレクション前なんて、とても繊細な時だ。密着だなんて、森下の負担が大きい。それを上廻っての大きい金額ならば、森下の今後のアプローチになります。」

そして、チカもそこには私情を挟まない。
この後藤が特集を組むならば、さらに瑠璃を日本人の判官贔屓に引き込ませられると知っている。

結婚後のロンドンコレクションのその頃には、瑠璃は妊娠をしている筈だ。
その、かなり繊細な時期にカメラが密着する。
後日のネタばらしになるし、それは一見、日本人の好きな、逆境に立ち向かう姿にもなる。

「承知しました。これは局に掛け合います。」

「是非。楽しみにしております。」

チカは後藤と握手をして、その場から離れた。
テレビ局の地下駐車場に向かう。

「後藤さんは、俺の大学の学部の先輩に当たる。」

チカは運転席に座り、今まで話さなかった具体的な話をし出した。

「二花くんを紹介してくれた人でしょ?」

瑠璃は飴玉をチカの口に入れた。

「ああ。俺も実花さんのマネージャーをして、初めて局で、後藤さんと出逢ったけどな。その、一回の、挨拶だけだった、面識は。名刺を渡したから。」

チカはすぐに運転を始めた。

「俺に是非紹介したい奴がいると連絡がきて、面倒くさかったが、これもつきあいだと思い、そのバーに行ったんだ。」

「そこで運命的な出逢いを果たすのね。」

バーで二花を見た時に、チカは胸が激しく躍動したろう。

「それに、後藤さんは二花と身体の関係がある、と、すぐに判ったからな。危険信号は鳴っていた。でも、それ以上に二花は可愛かった。」

チカは赤面している。
二花との初めての出逢いの時を思い返しているのだろう。

「後藤さんは、二花の好みの男を探しては、二花に紹介してたんだよ。二花がその男に抱かれてる処を想像するのが、大興奮するんだとよ。」

「悪趣味ね。」

おそらく、二花が二十代の頃からの関係だ、後藤とは。
ただの身体の関係。
したい時にする、セ フレ。
それは後藤が、実花の知り合いが所以だ。
元々は、実花の飲み友だちだったのだろう。

だから、決して悪人ではない。
ただの、悪趣味なオジサンだ。

「どうであろうと、チカは嫌いなのね、後藤さんが。」

「そりゃあ、そうだろ。自分の恋人のセ フレを許可出来るか?俺とつきあいつつも、アイツに抱かれるって許せるか?俺は、ムリだった。」

「そうよね。」

「だから、二花に選択を迫った。俺とつきあいたかったら、あの男を切れって。ま、切ってないんだけどね、結局。それでも二花は、俺とつきあってる間は、ちゃんと約束を守ってたよ。」

「あたしは、二花くんとつきあい出したその頃には、すぐに裏切られてたけどね。」

二花は瑠璃に手を出すのを我慢する為に、後藤と他の女と、三人で遊んでいたのだ。
ならば、その女とも、近いうちに顔を合わせるのだ、きっと。
後藤と、こうして、今になって顔を合わせたのだから。

「二花の氣持ちも少しは判らんでもないけどな。パパとの約束とあるし、瑠璃に手を出しちゃいけないのに、瑠璃はどんどん色氣が出てきて迫ってくる、と。その誘惑から少しでも眼を逸らす為に、強い快楽を選んだんだろうな。」

男二人、女一人の三人で。
しかも、二花と後藤はバイセクシャルだ。
三人でどう絡 み合っても、三人とも快感なのだ。

「だけど、俺は奨励しないよ。世間的に許されないとしても、まだ、瑠璃ひとりに向き合った方が誠実だった。だから、二花は不義理だ。」

その強い快楽ですら、二花には我慢が効かなかった。
そして、どうしてもチカを忘れられずに、チカの身体を求めに行った。

「後藤さんは?」 

「ん?」

チカはすぐに飴を囓り、お替わりを要求してきた。
また違う味を、チカの口に放り込む。

「後藤さんも、二花くんを愛してるんでしょ?」

「ま。でも、ある意味、家族みたいなもんだって、二花は言ってたよ。腐れ縁だって。互いに、恋愛感情は今更無いけど、連絡がしばらく無いと、今何してんだろうな、死んでないかなって氣になるんだって。このまま、お互い結婚しなきゃ、将来、介護の世話やなんかしてくんだろうなって。」

「切実ね。」

独り身の四十男らしい現実的な話だ。

「だから二花は、後藤さんの老後の心配も頭にはあると思うよ。神楽と結婚してもさ。」

「神楽ちゃん、大変ね。」

夫の以前のセ フレの面倒も、将来的にみなくてはいけなくなるかもしれないのだ。

「後藤さんもモテるから、大丈夫だろうけどね。」

「判る氣はするわ。」 

彼はきっと、世話焼きだ。
酒が入るとだらしない二花の世話も、喜んでする。
それは、他の男にも女にも、一緒だろう。

「きっと後藤さん、上手なのね。」

「冗談でもやめろよ、瑠璃。」

愛した二花のセ フレだ。
その事実だけでも、チカは後藤の存在を許せないのだろう。
男の嫉妬は、怖い。
瑠璃は、それを思い知った。

「二花は後藤さんに、瑠璃の名前は一回も出してないって言ってた。だけど、二花より背が高くて、ティーンズ誌の読者モデルとは伝えてたから、バレバレだよねって。」

「しかも、ママの知り合いだしね。」

すぐに判るだろう。
二花の若い恋人の正体は。
かつて瑠璃が二花とつきあっていた事、しかも今の瑠璃の恋人のチカはまた、二花の男だった事を知っている存在が、そこにふたりはいる訳だ。
後藤と、そしてもうひとりの女だ。

万が一、それを揺さぶられたら、堂々と世間に公表しようと瑠璃は考えたし、そんな思案はすっかりチカの頭の中に構築されているだろう。

薄暗くなった頃、海に着いた。
ここは、二花のよく入るポイントのひとつ。
シーズンの海は、サーファーも多い。
しかし、もう薄暗いから、人氣は逆にカップルが多いだろう。
それでもここは、なかなか地元民しか訪れにくい、入り組んだ場所だ。
車は離れた処に、他に一台があるのみだ。

「しゃ ぶれ。」

チカはベルトを外し下着を降ろし、瑠璃の頭を押さえつけた。

「いや……ダメ、こんな処で。こんな、大きいの、ムリよ。」

こんな場所で、車の中で。
とてつもない興奮が押し寄せる。
本当はすぐに、猛々しい ソレを 口で頂きたいのだが、抵抗して、チカのシナリオに添った。

「うるせえ。」

ぐっと押さえて、口につけさせる。
瑠璃はようやく、ソレを口に入れた。

「つっ……美味いか?」

瑠璃は悦んで口で愛している。

「ほひしい……れふ。」

「いや らしい女だな。こんな場所で咥 えて悦んでやがる。お前は、見られるかもしれないと思うと、嬉しいんだよな。」

それは、間違いない。
聞かれるかも、見られるかも、という状況には、余計に燃える。
リックに、チカから攻められているのを見られて、とてつもない快楽だったのだ。

「ひゃ……ろうひよ。」

どっと溢 れてきた。

「なんだ、これは?」  

チカはワンピースの裾から手を入れ、下着の横から指で触れてきた。

「瑠璃、こんな場所で、こんなに垂 らしたのか?変態 女。」

「ひょ、ひょめんなふぁいっ、」

覗かれるかもしれない。
瑠璃がこんなにドMだと、社会的にバレるかもしれない。
それが瑠璃の意識を混濁とさせる。

そうしたら、男どもは、こぞって瑠璃を押し倒してくるだろう。

「ふぁっ……」

その妄想は、瑠璃を、ただのメスにさせた。
誰でもいい、男なら、瑠璃を満足させて、イ かせて。
満たしてくれるなら、誰でもいい、のだから。

「益々盛 ってんな、瑠璃。」 

卵子は精 子を欲しがっている。
強い精 子を求めている。
この、盛 り。

今すぐ、頂戴。
種を くれる 男の子どもを身籠りたい、すぐに。

「口に放ってやるよ、瑠璃。これを膣 に変換しろよ。俺の精 子……たっぷり受け取れ。瑠璃の 種 つけは、俺だけだ!あ……あっ、あっ、あっ、」

チカの味、いちばん好き。
口内に発 射される。
それを、脳内変換される。

受け取る。
無数のチカの精 子を 膣 で受け取る。
ああ、孕 ませて。

「瑠璃、俺の精 子、嬉しいか?」

瑠璃の頭を、ぐっと押さえている。

「種、つけてやったぞ。嬉しいか?」

ああ、チカに体内を 犯 される。
チカの精 液を、体内に摂り入れたのだ。
身体の隅々まで、チカに侵略される。

「ふれ……ふれひい。」 

チカを吸いながら、腰をひくつかせていた。
指がぐっぐっぐっと、関節で曲げて 擦 ってきている。

「いいぞ、瑠璃。存分に垂 らせ。」

チカに許可されたから、身体を緩ませる。
じわじわじわと、生温かく、流れてくる。

「あとでシート、俺は舐 めるから。」

チカはそんなに瑠璃の体液が好きなのだ。
その溺愛もまた、瑠璃を緩ませる。

「こんなトコで、何回イ ッた?瑠璃。」

回数なんて判らない。
そんなものは、チカがカウントしていればいい。

「帰ったらすぐに、お仕置きだ。こんなにいや らしい女には、とびきりのお仕置きが必要だ。」

「あ……ああ。」

シートベルトを着けられ、瑠璃は震えている。
暗いし、ここからは車の往来も少ないので、もう顔を隠さない。

「舌出しちゃって。や らしい顔だな、瑠璃。」

運転しながら、チカは横眼で瑠璃を観察している。

「こんな顔、リックに見られたな。」

「あっ……んっ、」

想い出してしまう。
リックの真っ直ぐ見ている青い眼を。
口中が、リックのカタチを再現する。

「妄想してろ。リックがその顔を見て堪らなくなって、お前の身体に舌を 這 わすのを。」

「あっ、」

リックが瑠璃を押し倒してくる。
そのまま、深い快楽に身を任せる。
それを、チカに見られている。

「指でかき 混ぜられ、舐 められ、お前は善 がって泣き叫んでいる。俺が見てるからだ。俺の眼で犯 されながら、瑠璃はリックに、もっと もっとと、せがむ。」

「あふっ、あっ……」

チカの、その言葉の誘導だけで、こんなになる。

「いいね、瑠璃。お前は感度がいい。言葉だけでイ ケるんだから。」

チカに触って欲しくて、こんなに乱れる。
こんな風にいじめられるのが、堪らない。
瑠璃は自分の指で 弄 り始めた。

「あーあ。この変態 女、車の中で自 慰をするのか。」

チカのその意地悪な声に、瑠璃は震える。

「相当なお仕置きして欲しいんだな?」

「して…してください。こんなにいや らしい瑠璃に、お仕置きしてください。」

「そうだな。股 開いて 縛るか。そのまま放置で。」

「いや……ダメ、そんなの。早く、触って。」

「お仕置き、だろ?そうだな、後ろに 指 入れといてやるよ。それで、放置だ。」

「やっ……」

瑠璃はぶるぶる震えて、達した。

「ああ、そうだ。直腸検査をしよう。そして、膣 も内診する。妊娠しやすいかどうかを調べる。俺は医者だ。検査してやるんだよ。」

白衣を着用して、そしてきっと、これは太い注射が必要だと言い出すのだ。
ただ、どちらに注射となるかは、チカの氣分次第だ。

「調べて……ください、先生。」

「調べてあげますよ、中までしっかり診ますからね。」

チカは楽しそうに笑っていた。
まさか、器具まで揃えていたとは、この時点では瑠璃は知らなかった。
産婦人科での初めての内診に怖がらないようにだよ、とチカは言っていたが、殆どは趣味だろうと瑠璃は知っている。
…………………………………………………………………………

「お、おかしくない?」

「全然!」

胸の谷間をわざと強調させ、セクシーなキャミソールドレスを身に着けさせられた。
瑠璃のブランドではない、他のブランドの製品だ。
この日の為に、チカはわざわざ用意した。

「おかしいわよ、絶対に。金髪なんて。」

瑠璃は鏡で全身を見ながら困惑している。
チカは金髪のウイッグまで用意をしていた。

「日本人なのに。絶対におかしいわ。眼が、この色なのよ?金髪は、ないわ。」

「そんな事はナイ。瑠璃は金髪も似合う。うん、似合う。瑠璃るりは、流石だにゃー。」

チカは大絶賛をしているが、金髪ならばもっと眼の色を薄くしなければ違和感がある、と瑠璃は素直な感想だ。
特にアイメイクは濃くされ、普段の瑠璃よりも派手に見える。

「これで、外国人の振りをするの?」

「そうだよ。話しかけられたら、必ず英語だ。お前の名前はCathy!」

「チカ、キャシー好きよね?沖縄でも、キャシーって言ったわ。初恋の人?」

チカは瑠璃の金髪を撫で廻している。

「Cathyは、香港のホテルのベルガールだ。可愛い娘だった。」

「だった?」

チカはふっと笑って、唇にキスをする。

「あれから、二十年経ってんだぞ。きっと、美人のままだろうけどな。」

瑠璃は、成る程、と頷く。

「キャシーに逢いたいわね。」

「いや、俺はあの頃の想い出を大事にしたい。」

勝手な男の初恋の記憶だ。
口紅に塗られる。
これはアフタヌーンティーで出逢った日本人の彼女の勤めるショップで購入した。

「発色は凄くいいので人氣なんですが、落ちやすいんです。」

瑠璃の来店をとても喜んでくれた彼女が紅を塗ってくれて、そう説明してくれた。

「いや、瑠璃の唇がより艶っぽくて綺麗だ。」

チカはこの発色が氣にいったようだ。
そして、瑠璃の耳元に口を置く。

「このルージュなら、瑠璃が他の男とキスしたか、よく判るからね。」

そう、意地悪げにささやいた。
チカがリックの車に見惚れている時に、リックに密かにキスをされていたのを、チカは氣づいているのかもしれない。
瑠璃は赤くなった。

微妙な色違いを五本求め、そしてふと頭に過ぎった人物の為にプレゼントとして三本を包装してもらった。

今日もきっと、帰る時に紅が取れていたら、浮氣を疑われるのだろう。
瑠璃は鏡を見ながら、そっと唇の下に指で触れた。
ショールを羽織り、家を出る。

「うー。ドキドキする。」

チカと離れて、久しぶりに友だちと遊ぶのだ。
もし、男たちに絡 まれたら、どうしよう。
正体がバレて、囲まれたら、どうしよう。
そんな不安が増大する。

「ま、そんな事言ってても、瑠璃はその場に行ったらシャキッとするんだから。女王さま然としてれば、簡単に声は掛けられないさ。」

チカのその計画が、功を成せばいい。

「でも。」

「だから、麻里とスミに頼んだろ?お前の世話を。」

いつもなら片時も瑠璃を離さないのに、今日のチカは余裕綽々だ。

「今日の俺は心安らかに神に祈っている。どうか、この愛する女をお守りくださいと。神は言った、」

「神さまの声が聞こえるのね。」

いつもながらの、チカのビッグマウスだ。
大きなブラウンレンズサングラスの瑠璃はくすっと笑い、運転席のチカを見ている。

「そうだよ。神は言った。案ずる事はない。汝の不安を解き放て。時は来たり。」

タンクトップにハーフパンツのチカは、神妙な面持ちで語っている。

「何の時が来たのかしら?」

「判らない。しかし、神の御声だ。有り難く、そのままを受け取るよ。」

瑠璃は、くすくすと笑っている。

「ま。なんかあれば、蹴っちまえ、瑠璃。今日は許す。力一杯、蹴ろよ。」

「そうするわ。」

すっかりと緊張が緩んだ処で、麻里の家に着いた。

「いやーっ!何?浮くわ、浮く!あたしらが、浮く!全然合わなーい!」

瑠璃の艷やかな姿を見て、麻里とスミは驚いていた。

「留学生のCathyだ。同じ高校に通うお前たちが、Cathyが来たがっていた日本のオタク文化圏を案内する。その筋書きは、前も言ったろ?」

「言ったけどー!やり過ぎ!チカ、ウケるー!」

「JKにウケられて、俺も本望だよ。」

チカはしれっとして、麻里とスミを後部座席に案内した。

「えー。チカって、その格好だと普通の若者じゃん。前はネクタイだったし、大人って思ったけど。」

「俺もたまの一日休みには、リラックスしたいんだよ。」

チカのいつものシャツとノータックのパンツの腰廻りや尻が大好きだが、その、ラフな格好のチカも好きだ。
逞しい胸筋や上腕二頭筋や三頭筋が、タンクトップでは露わになる。
これが堪らない。

これまではシーズン通してスーツのチカだったが、日本に帰ってきてから、仕事の時もそう改まらないのからジャケットを羽織らず、普段は半袖シャツとネクタイになった。

スーツが戦闘服のチカだ。
どういう心境の変化?と瑠璃が問うたら、チカは笑って、ラクにいこうかと思って、と答えた。

チカの中で、きっと頑なだった緊張が解けたのだ。
リックのおかげで。

瑠璃は、尚更、チカの実の父親と逢う機会を増やそうと決意した。

「チカ、どうすんの?今日。」

「こっそり、後をつけてる。」

「やだあっ!ストーカー!」

それこそチカらしいと思ったのだが、瑠璃には。
気づかぬように、後ろをつけているから、心配は無いと言い切れるのだと。

「それか、ラーメン喰いまくるね。瑠璃となら、ラーメン屋に入れないし。」

「え?瑠璃、ラーメン好きなのに。じゃあ、これからはラーメン、食べましょうよ、一緒に。」

つきあい出して、一回もラーメンが食べたいとは言い出さなかったチカだ。

「瑠璃、お前は氣づいてるか知らないが、お前のラーメンを喰う姿は、きっと、とても人に見せられない。」

「何、それ?」

「あー、なんか判るかも。」

麻里とスミは、くすくす笑っていた。

「なんか、豪快だよね、瑠璃のラーメンの食べ方。」

「そうそう。ズルーって一氣にすする感じ!」

「そうかしら?」

麻里とスミならともかく、チカの前ではラーメンを一回も食べた事がないのに、どうしてその姿が判るのか。

「いいわ、別に豪快でも。チカ、今度、ラーメン食べに行きましょ。駅前のラーメン屋さん、そこそこ美味しいわよ。」

「そこだよ、そこ!あの店長が愛想ない店!瑠璃とよく食べに行ったじゃん!」

「うん、懐かしい。全然行ってないから、食べに行きたいもん。」

最初は、二花が幹也と共に連れて行ってくれたラーメン屋だ。
以来、二花はよく食べに連れて行った。
そんな風に、瑠璃が子どもの頃は何の不安もなく、二花とはよく店に入っていたのに、つきあい出した途端、バレてはいけないと何処にも店に入らなくなった。

あの店も普通なら女子同士で入るのはためらう愛想のなさだが、麻里とはよく食べに行ったのだ。

「地元民しか行かない場所だから、大丈夫よ。」

「なら、今度行ってみるか。」

チカは瑠璃がラーメンをすする処を想像したのか、くっくっくっと笑っていた。

「あれ、ねえチカ、千夏ちゃんはどうしたの?」

麻里の問いに、チカは前を向いて運転しながら、ギラッと睨む。

「あ、ごめん。」

麻里は慌てて口を押さえた。

「千夏?千夏って、加藤千夏?千夏がどうしたの?」

転校した先の中学の時の、親友だ。
その千夏の名を麻里が口にし、チカがそれを睨んだ。

なんだろ?
瑠璃は首を傾げた。

「あ、いやさー。千夏ちゃんのドラマ、あたし好きだから。サイン欲しいなーってチカに頼んだんだよね。」

麻里は、そう答えた。
怪しい。
サインくらいで、チカが睨むのか。

千夏は今、ドラマの撮影の佳境だ。
来月の半ばで終わると、連絡が来た。
瑠璃がまたロンドンに行く前に逢いたいな、とは千夏は言ったが、それでもスケジュールが合うかどうか判らないので、具体的な話はしていない。

ドラマも帰国してから、幹也に録画してもらったのをまとめて観た。
千夏、随分と大人っぽくなったな、とその演技に見惚れた。
キスシーンが艷やかだったのだ。

「サインなら、千夏に逢ったら貰っておくわ。」

「ホント?サンキュー!瑠璃。」

そこから、女子高生はテレビドラマの話題となった。
きゃぴきゃぴと感想を述べ合っている。
瑠璃は、その千夏のドラマ以外は知らないので、黙って聞いていた。

ティーンズ誌のモデルから引退して、チカに逢わなかったら、瑠璃もこうして今頃は、普通の女子高生として、きゃぴきゃぴとドラマの話をしていたのだろうか。

いや、有り得ない。
瑠璃はひとり、首を横に振った。

グラビアアイドルには、なっていたかもしれない。
人氣のグラビアアイドルになるのも、とても並大抵ではないが。
そして、男好きだと噂されていたかもしれない。
その結末は、AV出演だとか。

それはそれで経験だが、いや、そこに到るまで何処かできっと、孕 んでいたろう。

あのまま、ズルズルと二花とつきあって、寂しくてきっと、他の男と遊んだろう。

チカは、ぷっと笑い出した。
瑠璃の頭を読んだのか。


有り得ねー。
お前は、トップモデルだよ、瑠璃。
その人生しか、ない。


頭に響いてきた。

そうね、チカ。
この人生しか、ないわね。

瑠璃は、うふふと笑って、チカを見つめていた。

瑠璃シーン⑥中編3に続く
……………………………………………………………………

ツッコミどころ満載ですが字数制限!


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トーチカ〜瑠璃シーン⑥前編14

小説です。人に言えない嗜好や秘密、官能
人間はそれをどう思うか
自分でどう対処していくのか。

みんな違って、みんないい。
人と違う自分を異常と責めないで。


アメブロで消されてしまうので、はてなブログに上げます!

瑠璃シーン⑥のキャッチコピーは、
俺とお前の攻防戦。
(チカ曰く、なんだそうな。)

じわじわくる、サスペンス劇場。

半年以上続いたトーチカ~神楽シーン⑥が終わり、
トーチカ~瑠璃シーン⑥始まりました。
トップモデルとなった瑠璃の真骨頂とも言える、瑠璃シーン⑥となります。

瑠璃の魅力、瑠璃チカの結婚式、そして妊娠までを書きます。

神楽シーン⑥が男眼線のエロならば、
瑠璃シーン⑥は女眼線のエロとなるでしょう。

神楽シーン⑥での、瑠璃シーン側では、何が起こっていたのか?
真実は、こんなだったという意外性満載!

トーチカ~瑠璃シーン⑥
トップモデルとなった瑠璃の真骨頂とも言える、瑠璃シーン⑥となります。

瑠璃の魅力、瑠璃チカの結婚式、そして妊娠までを書きます。

トーチカ~瑠璃シーン⑥前編13
ファッションの重鎮に「あなたはパリで活動すべき。」と言われた瑠璃。
パリも楽しみ、ここはたまに来る場所と認識する。
ロンドンを拠点にモデル活動をしていくと決めた。


トーチカ神楽シーン①
東三河に住む、未来を知っている少女
神楽の眼線
神楽シーン⑥で、東三河から神奈川に嫁入りしました。

トーチカ~瑠璃シーン①
神奈川に住む、ティーンズモデルの美少女
だった瑠璃の眼線
今は世界に立つスーパーモデル

神楽シーン瑠璃シーンの同時期を交互に書いていきます。
どちらにも童顔、永遠の少年の二花(つぐはる)が絡んできます。

トーチカのこれまでの話のリンクはこちらから

トーチカ以前のお話もこちら↑



BGMにミニーリパートン"Lovin'g you"。

"カルメン組曲"。

つるの剛士"You're the only shinin' star"、原曲のミポリンもいいの。 

華原朋美"I'm proud"
人は人の真実の些細な言葉で癒やしが起こり、突然変わってしまうものなのだと目撃しました。
話を書いていて、打ち震えた。
わたしの誇り、誰の誇り?

そして
TM network "ELECTRIC PROPHET -電気じかけの予言者" 
昔から大好きな曲で、恋人がここから、また一緒に歩き出す、というイメージです。
「We are inferior to each other
   We surrender everyday」
互いに常に、そのままの相手を認めあい、見つめている。

言うは易しだけど、特に恋愛においては、とても難しい課題。
瑠璃とチカは、そこに向き合っていきます。

さあ、前編を終えるのに、これが必要だった。
瑠璃とチカの物語、ひとつのポイントへ進みます。

トーチカ~瑠璃シーン⑥前編14

その日は突然やって来た。
これが神の采配というものか。
瑠璃とチカは、後からそれを実感する。

ロンドンに帰ってきた次の夜、チカのスマートフォンにリックから、残り二セットが完成したと連絡があった。

「You don't have you come. We would go get that tomorrow. (来て頂かなくても結構ですよ。明日、取りに行きます。)」

チカは業務連絡のように言ったが、そのあとの向こうの話を黙って聞いていた。

「Certainly. I apologise for the trouble this will cause you, but I appreciate your kind cooperation. (了解致しました。お手数をお掛けしますが、よろしくお願い致します。) 」

そして、バカ丁寧に返事をしていた。

「なんて?」

テーブルでツナの生姜醤油煮を食べながら、瑠璃はチカに尋ねる。

「明日から二日、仕事で郊外に行くんだとよ。だから、どうしても今日、渡しときたいってさ。わざわざ、帰るついでに家に来てくれる。メンドー。」

チカは鼻息を大きく吹いてから、椅子に座った。

「あら。リック、ご飯食べたかしら?ついでに食べてったらいいわね。」 

おかずの量はもう足りないが、冷蔵庫に肉がある。
瑠璃は椅子から立ち上がった。

「リックの為に、わざわざ作らなくてもいいよ。」

「届けに来てくれるのよ?じゃあ、あなたの為に作るわ。肉が食べたいって泣かれるから。」

「……そんなら、肉じゃが。」

「ええ、いいわよ。」

渋々とした顔のチカのリクエストに応える。
早速、瑠璃はじゃがいもと玉葱をカットしていく。
チカはその姿に見惚れながら食べている。

「あかん。瑠璃の素早い調理姿も艶やかすぎるわ。もう、ぼ っき ぼきや。」

何故、関西弁かは判らないが、チカは右手で箸を使いながら、左手で 股 間 を撫でていた。

「いつも、それね。」

「裸にエプロンさせてえ。リックが来るんじゃなきゃ、今すぐ脱がすのに。」

そんな訳で、料理どころではなくなる時もたまにあるのだ。

とはいえ、チカに妙な緊張感がある事を、瑠璃は肌で感じ取っていた。
リックが家に来るのが、相当不快なのか。

肉じゃがが出来上がった頃に、リックはやって来た。
相変わらず煌めいた紫のキャミソールドレスだった。

「We take our shoes off inside the house.」

チカはぶっきらぼうにそう言い、玄関でスリッパを差し出す。

「Thank you. 」

リックは、そんなチカの後頭部をじっと見ていた。
ハイヒールを脱いで、そして、瑠璃に微笑む。

「Rick, did you eat dinner?」

瑠璃はリックを見上げて尋ねた。

「I still haven't eaten. 」

「お腹は空いてる?よかったら、食べて。和食だけど。」

リックは、じっと瑠璃の顔を見ていた。
そして、チカの顔を見る。

「She makes food for me. You can eat the remainder of the food. (彼女は僕の為にご飯を作ってくれるんだ。その残りを食べたら?) 」

相変わらず、嫌味な言い方をする。
たが、リックは微笑んで頷いた。

「食べます。ありがとう。」

瑠璃のお手製の和食、というのが相当に嬉しかったらしい。
リックは箸使いも上手だったし、肉じゃがもブロッコリーのサラダもライスも味噌汁も、喜んで食べた。

「美味しい。とても、美味しい。」

喜んでくれると、張り合いがある。
チカも負けじと、食べていた。

「あなたはしあわせものだ。」

リックはチカを見て、笑いながら、そう言う。
そんな巧みな言葉遣いも、以前の恋人から習ったのだろうか。

「Yes, I'm the happiest person in the world. 」

チカは平然と返した。

「こんな女は、もっと奪いたくなる―お待たせしました。これを。」

食事の途中だが、リックは荷物から丁寧に包装した袋を取り出した。
瑠璃に手渡す。

「ありがとう。試してみるわね。」

「じゃ、俺も。」

チカは箸を置いて立ち上がった。

「チカは食べてて。」

「いや、俺がしっかり見ないと。」

「もうっ。」

瑠璃は恥ずかしそうに立ち上がる。

「リック、食べててね。全部食べちゃってもいいわよ。」

「ありがとう。美味しいから、沢山食べるよ。」

「沢山、食べて。」

そんな瑠璃をチカは強引に手を引いて寝室に連れて行った。
寝室に入ると、瑠璃の両手首を後ろにして摑む。

「何、他の男に色目使ってんだ?」

低い声が耳元で響く。

「使って……ないわよ。」

「リックに褒められたかったんだろ?手料理食べさせて、手懐けたかったのか?」

「そんなの……」

その期待が無かったとは言えない。
チカは舌打ちして、瑠璃を勢いよく脱がした。
下着も剥ぎ取る。
そして、新たなセットを着けた。
赤の光沢のあるセクシーな下着だ。

「うん。似合うよ、これも。ぴったりだね。」

声がいつもより、怖い。
すぐに脱がせて、またもう一セットを着けた。
こちらは光沢のないタイプだ。
その落ち着きさとレースの豪華さが、逆にきらびやかだ。

「で、これは瑠璃、頼んだかな?」

チカは苛々としながら、袋からロイヤルブルーのベビードールを取り出した。

「頼んでないわ。」

頼んだ覚えも、見覚えもない。
明らかにリックからの贈り物、だった。

「やら しーよね、これ。スケスケだし、臍から開いてて。」

怒りながらも瑠璃にそれを着させた。

「うん、似合うよ。余計に襲いたくなるな。」

チカは少し離れて冷酷な眼で瑠璃を観察している。
それがまた、ゾクゾクとする。

「今はーダメよ。」

リックがいるのだから。

「ダメ?」

チカは後ろから下着に手を入れてきた。

「こんなにしてて?何が、ダメ?」

「あ……イヤ。」

指で 音を 激しく 立てている。

「あっ、んっ、」

「そんな声出したら、聞こえるぞ。」

耳元で押し殺した声が瑠璃を攻めてくる。
苛ついているからか、余計に執拗だった。

「だっ―ああっ!」

指が 一氣に 三本に 増えたから、瑠璃は叫んで仰け反った。

「そんな大声を出して……聞かせたかったんだな?リックに。」

「ちが―やっ!あっ!」

訳が判らなくなる。
ただ、チカにもっとされたい。
リックがこの家にいるだなんて、それすら、どうでも良くなる。

ふっと、チカは瑠璃を離した。
急にワンピースを着せていく。

「あ……チカ、ダメ。我慢―出来ない。」

こんなに中途半端にして。
達する直前だったのに。
瑠璃は息を荒くして、チカの首に抱きつく。

「お願い、もっと、して。」

「ダメだ、リックがいる。我慢しろ。」

最上級に意地悪なチカだ。
瑠璃はこの冷酷なお仕置きに、氣が遠くなるようだった。

「も……ダメ。して。」

「顔に出すな。我慢しろ。」

チカは怒っているだけではない。
何かの苛立ちがあるのが、判る。
それはただ単に、リックが家に来たから、だけではない。

「イヤ―ムリ。」

「我慢しろ。」

瑠璃の顎を摑んで、深い緑の眼が見据えてくる。

「我慢出来なかったら、リックの前で 犯 すぞ。」

その言葉に、瑠璃はどくんと震える。

「何、垂 らした?こんなにして。」

脚の間を、つっと生温い液体が伝っていく。
下着を穿いてるのに、こんな。
瑠璃はただ、小刻みに震えている。

「や らしい女だな。犯 されたいのか、そんなに。リックの前で 犯 される事、想像したらイ ッたのか?」

「や……」

チカの指が、その液体を拭う。
それを口にしていた。
チカはしゃがんで、瑠璃の脚にある体液を舐 め始めた。

「瑠璃はこんなに淫 乱なんだね。そうか、見られたいんだな、リックに。」

「そんなの……イヤ。」

嫌な筈なのに、身体が勝手に反応した。
瑠璃がチカに後ろから指で 弄 られている処を、リックが見入っている。
その眼、あの、興奮した青の眼を想い出して、瑠璃は更に震えた。

「ああ、また出てきた。凄いな。」

チカは脚を摑みながら舌を動かしている。
その手が上に移動し、下着を脱がした。

「新しい下着もこんなにして。これをリックに見せるか?汚すくらい、とても興奮する下着ですって。」

「イヤ……」

「イヤって言いながら、瑠璃スゴいよ。どんどん溢 れてくる。」

「ダメ、ダメ……」

自分がここまでとは知らなかった。
こんな状況に、とてつもなく感じている。
ゾクゾクする。

「超ドMは、こんなに乱れてる姿を他の男に見せたいんだな?」

「イヤ、やめて。」

舌を離して、チカは立ち上がった。

「瑠璃が見せたければ見せろ。イヤなら我慢しろ。」

「ダメ……」

それなのに、チカは手を引いて寝室から出る。
瑠璃の脚は、ガクガク震えていた。
こんな達する 直前の状態のままで、人前に出た事はない。
すぐに溢 れてきそうだ。
抑えが利かない。

「合いましたか?」

瑠璃とチカの顔を見て、リックは尋ねてくる。

「ええ、とても。ステキでした。」

チカはニヤリと笑い、珍しく日本語で返した。

「良かった。」

リックは安心したかのように、少年のような氣を許した顔を見た。
その顔を見たら、瑠璃は震える。
急いでキッチンに行った。

「ご馳走さまでした。ルリ、美味しかった、ありがとう。」

「ええ……。また、いつでも食べに来て。ランジェリーのお礼よ。」

震えながらも、瑠璃はなんとか平常を保った。

「紅茶を淹れようね。お湯を沸かそう。」

そんな瑠璃の様子に、チカはニヤニヤとしている。
横に立った。

「我慢、しろよ。」

耳元で小声で呟く。
その忠告に、瑠璃は更に震える。
チカは澄まし顔でケトルで湯を沸かしてから、テーブルの上の食器を片づけ始めた。

「私が洗います。」

リックが立ち上がり、空いた食器をシンクに運ぶ。

「いいのよ、リック。これはチカの仕事なの。」

お願い、近くに寄らないで。
瑠璃は動悸が激しくなるのを止められなかった。

「そう。俺の仕事なんだ。俺の仕事を取らないで欲しいな。」

チカは珍しく、にっこりとリックに微笑む。

「お客さまは休んでてください。」

リックの肩に手を置き、ソファに誘導する。

「それなら……。ルリ、are you ill?」

リックの問いに、瑠璃はびくっと身体を震わせる。
瑠璃の異変に氣づいているのだ。
リックに欲情を悟られる訳にはいかない。

「大丈夫よ。パリの疲れが出たのかしら?」

咄嗟に訳の判らない嘘をつく。

「それなら休んでください。私は帰ります。」

「いいえ。大丈夫です。紅茶、飲んでって下さいね。」

チカはまた、にっこりと笑う。
普通ならば、すぐに帰れと追い出すだろうに。
どうして、こんなにリックを煽っているのか。
瑠璃は頭の中が判らなくなる。

「瑠璃も座ってなさい。」

チカに腰を抱かれ、瑠璃はびく びくっと震える。
ダメなのに、こんなのは。
瑠璃はチカに誘導され、リックの向かいのソファに座らされた。

「ルリ、休んでください。」

リックは心配そうに瑠璃の顔を覗く。

「大丈夫。病氣ではありませんから。」

「However... . 」

チカのこれまでにない、確信に迫る発言だ。
この人は、瑠璃を煽っている。
氣づいた。

リックの前で、瑠璃が明らかに欲情のしるしを見せるように誘導しているのだ。

「パリに行っていたんだね。」

「ええ、パリの雑誌の撮影で。」

瑠璃は眼を閉じて、受け答えをする。
水の音が聞こえるから、チカが食器洗いを始めたと判る。

瑠璃の露わになった欲望。
だけど反面、そんなのは嫌だと感じてもいる。

チカは、それを叶えようとしている。
瑠璃が望む全てを叶えてやる。
そう、約束したのだから。

「以前、チャスとパリにファッションの勉強に行ったよ。」

「チャスとは、どうして知り合ったの?」

上手い具合に、チャスとの出逢いを話してくれると氣が紛れる。
興味があるから余計に、瑠璃はその話を聞きたがった。

「In a College of fashion. 同じく学んだんだ。」

「それでなのね。」

「チャスとは話があった。楽しかった。」

リックとチャスの見た目の共通点は何もなさそうだが、しかしファッションの趣味は合ったのだ。

「チャスとは、ずっと友だちだ。」

「いいわね、そんな関係。リックはファッションの勉強をする前は何をしてたの?」

チャスより五年年上のリックだ。
入学以前に、彼も何かがあったのだ。

「私はuniversityを卒業して、 worked for the trading company. 」

商社に勤めていたというリックに、瑠璃は眼を開けて、じっと見つめた。

「私がこんな女性のような格好をしているのは、そのCollege of fashionの途中からだ。それまでは普通の男の格好だった。」

「そうなのね。人生が変わったのね。」

転機だったのだ、リックの。
個性的な同級生に囲まれ、リックも真実の自分を出せるようになったのだ。

「どうしてもfashionを諦められなかった。会社を辞めて、勉強が出来て、良かった。私はウィメンズが好きだ、小さい頃から。」

「今は幼い時の憧れの仕事をしてるのね。」

リックの夢。
叶えられて、よかった。
瑠璃は心底、そう感じた。
自分の事のように嬉しかった。

「チャスのおかげだ。チャスが私を引っ張ってくれたからだ。男が女のlingerieを作るなんて、何度、objected throughout the trade.  諦めそうな度に、チャスが助けてくれた。」

助け合う友。
チャスも辛い時にはリックに支えられたのだろう。

「お待たせしました。」

チカは紅茶を出した。

「チカの淹れてくれるa cup of tea、美味しいのよ。」

「本当だ。美味しい。」

リックは一口入れて、眼を細めた。

「あたしはcoffee淹れるの、得意よ。」

「では、I want to drink the coffee, too. 」

「また、今度ね。」

リックは、瑠璃と隣りに座ったチカを、よく見ていると氣づいた。

「ふたりは……お似合いだ。」

リックは嫌味なく、素直にそう言った。

「私が入る余裕はない。判っているが、それでも、ルリを愛している。突然、愛してしまった。」

瑠璃はその真っ直ぐな告白に、どきりと胸が震える。

「どうしたら、あなたが手に入るだろうか、いつも考えてしまう。」

「―例えば、どうしたら手に入ると思いますか?」

チカは冷淡にリックを見ていると氣づいた。

「さあ、判らない。こんな氣持ちは初めてだ。だけど、ルリ、あなたが欲しい。」

ずんっ、と、子宮が熱く疼 いた。
日本語が達者とはいえ完璧ではないからこそ、余計に素直な言い方に聞こえるのだ。
しかし、これがリックの本質だと判る。

女装の自分を曝け出した時に、素直な氣持ちに沿う事の歓びを見出した。
だから、リックは嘘をつかない。
そのままのリックを見せてくる。

ドキドキする。
リックに出逢うのがチカよりも早かったら、リックに惚れたのかもしれない。

女装に驚きつつ、この男の 種 が欲しいと、身体の欲求を抑えられなかったかもしれない。

ちっとチカは舌打ちを明らかにした。
そして、瑠璃の太腿に手を置く。

「あっ、」

思わず感じた 声が出てしまった。
チカはニヤリとして、そんな瑠璃の顔を見ながら、指をそこで動かしている。

「あっ……ん、」

声が、さらに出てしまう。
リックが瑠璃を熱く見つめているのが、ぼんやりとした眼に見える。

「瑠璃の負けだな。」

チカは低い声を瑠璃の耳に流し込む。

「お仕置き、してやらないとな。」

すっと、指が入っていく。

「ああっ!」

もう、我慢が出来ない。
いつものような喘 ぎ声が出てしまう。
左手で腰を摑まれ、立たされる。

ソファに座っているリックの前で、こんな事をされている。

「あ、んっ、はぁ……」

卑 猥な音が部屋中に響いているし、いけないと堪えても、瑠璃はさらに艶めかしい声が出てしまう。
そして、腿に垂 れてきているのが見られてしまう。
大量に溢 れてきている、どんどんと。

赤く燃え盛 るような頭の中で思考がまとまらず、チカにされるがまま、いつも以上の快感に瑠璃の身体は震え続けた。

ワザと音を大きく 立てるように 指を 激しく動かしている。
この音が、瑠璃をさらに乱れさせる。

リックは眼を見開き藍の瞳孔を小さくして、真っ直ぐ淫 らな瑠璃を見ている。
息遣いは小さいながらも荒くなっている。

ごくっと喉が動き、自分の 股間 に触れた。
そして、ドレスの裾から手を入れ、裾をたくし上げ、セクシーなパープルの紐の下着から取り出して、手で動かし始めた。

リックの逞しい 赤黒い ソレ。
そこに眼がいってしまう。

チカよりも長く見え、チカよりは細い。
それでも 逞しい 代物だ。
さらに息を荒くして、瑠璃を熱く見上げながら自分で している。

そしてやはり、整えたヘアはハニーブロンドだった。

「はあ ぁ ん、あっー!」

リックが、チカに指で されて 喘 いでいる瑠璃を見ながら、自分で している。
その事実がまた、興奮する。
瑠璃は自分から何度も勢いよく溢 れていくのが判った。

「あー。見られて嬉しくて、こんなに吹いちゃったね、瑠璃。俺の手、びし ゃ びし ゃだよ。下、見てご覧よ、ぐっ し ょりだ。」

見下ろすと、床のカーペットが濡 れている。
この様もリックに見られてしまった。
瑠璃は恥ずかしくて、さらに訳が判らなくなる。

いや、こんなの。
リックの前で、こんな事をするだなんて。
だけど。

リックが瑠璃を熱く見つめ、荒い呼吸で、早く手を動かしている。
あんなに興奮している、乱れた瑠璃を見て。

嬉しい。
もっと、見て。
いや らしい瑠璃の顔を見て。
瑠璃、チカにされると、こんなになるのよ。
チカだから、いいの。
リックだから、見られていいの。
他の男なら、到底許可しない。
チカに、リックの前でこんな 恥ずかしい事をされて、嬉しいの。

登規さん、もっと、指で かき 混ぜて。
恥ずかしい音を、もっと立てて。
瑠璃をもっと、おかしくして。
リックの前で、おかしくして。

瑠璃が 昇りつめているのを見られ、こんなにいや らしい音を聞かせ、体液も知られた。
恥ずかしい。
でも、最高に嬉しい。

「あ あ あ っ!」

全身を小刻みに震えさせ、チカにすっかり後ろから抱えられている。
また、何回も勢いよく飛び出してきていた。

「イ ッたね、瑠璃。リックに見られながら、イ ッちゃったね。」

低い意地悪な声が耳元でささやく。

「良かったんだな、いつもより。」

瑠璃は、こくこくと頷いた。

「見られて氣持ちいいのか。とんでもない淫 乱だな、お前は。」

その辱 めも、嬉しい。
濡 れた指を、チカは自分の口に入れてから、瑠璃の口に入れてきた。
瑠璃はそれに舌を 絡 める。

「少し休んでなさい。大丈夫、あとからもっと、良くしてあげるから。」

瑠璃を床に座らせた。
ばたんと、瑠璃は寝転がる。

チカはつっと、リックの前に立ちはだかった。
手を動かしているリックを見下ろしてから、しゃがむ。
そして下着を脱がし、いきなり ソレ を手で摑み、口に 咥 えた。

リックは驚いているが、なすがままされていた。

「お…oohh…ah、」

チカはリックを見上げながら、口を動かしている。
口が大きいから、すっぽりと入る。
それを吸っている。
リックは氣持ち良さそうに顔を歪めている。

つっと、チカの頭の上に両手を置いた。
もっと、していい。
その肯定の証しだ。
チカのしている事を、リックは喘 ぎながら、濡 れた眼でよく観察している。

チカ、巧い。
瑠璃はチカの行為に見惚れていた。
口でずっと吸いながら、深く出し 入れをしている。
とても、氣持ちよさそうだ、リックが。

ああ、あたし、チカが男を攻めているのを見るのが好きなのだ。
興奮する、とても。
そうと知った。
チカの口の動き、出し 入れしているリックの ソレを見ていると、さらに溢 れ出してくる。

「Chicca…come!  I'm coming! 」

リックが切なさそうに、声を出した。
チカはリックを見上げながら、口を離さなかった。

「Uh! あ……うっ!」

チカの頭を押さえながら、リックは震えていた。

チカは口を離し、立ち上がり、つっと口元を手の甲で拭った。

「コイツは、渋い。渋味だ。」

チカは床に座っている瑠璃を見下ろして、真剣な顔で伝えてきた。

「そう。違うのね、ひとりひとり。」

「なんだね。口、洗ってくる。」

そう言い、平然と部屋から出て行った。
瑠璃は、汗だくの金髪を掻き上げながら、呼吸を整えているリックを見上げた。

「He is incomprehensible, isn't he? 」

リックは放心したまま、そう呟く。

「そうね。訳の判らない人よ。でも、氣持ちよかったでしょ?上手でしょ?」

瑠璃は笑いながら、リックを見ている。
まだ、硬さの残っている ソレも眼に入る。
リックは少し恥ずかしそうに視線を外し、余所を見た。

「男にされたのは、初めて?リック。」

「初めてだよ。まさか―ルリの男に、なんて。」

リックは戸惑っている。
何が起きたか、よく把握出来ていないような顔だ。

「前に男の恋人がいたの、チカには。男の経験は、その一人だけだけど。口で 愛する感覚が忘れられなくて、愛情抜きで男の人を口で 可愛がりたいって、よく言ってたの。」

「それで、私が標的にされたのか。」

hahahaと自嘲するように静かに笑った。

「あんな男でいいのか?He's quite a savage. He violated you before my very eyes. 」

リックは瑠璃に真っ直ぐ視線を戻す。

「リック、あたし、彼にああいう事されるのを望んでいるの。あたしたちは、そうなのよ。あたしは嬉しいの。判る? I'm a masochist. 」

リックは眼を見開いていた。
チカだとて、無闇に他の男の前で、瑠璃にこんな事をしないだろう。
リックだからこそ、こうしたのだ。
ふたりの 睦みを 見せる為に、リックを選んだのだ。

「つまりは、変態カップル、て事だ。」

部屋に入ってきて、チカは、そう口にする

「Thanks for the juice. 」

チカは冷ややかに、リックを見て礼を述べた。
リックは恥ずかしそうに顔を逸らす。
男に口で されて、感じてしまったのだから。

だが、しかし。
きっと、リックはチカにされた事を忘れられない。
何度もあの口の感触を想い出して、硬くなるだろう。
今も既に、リックの手の中で 立派になっている。

チカは氣にせず、瑠璃の隣りに座った。
瑠璃にキスをしていく。

「I don't let you touch Ruri. 」

瑠璃の顔や首に唇を這 わし、リックを見ながら、そう宣言する。
ドレスの上から胸を揉 みながら、何回も音をチュッと立ててキスをしてくる。

「あ……」

チカが首の後ろに舌を這 わせたので、また、艶めかしい声が出てしまう。

「リックの前で、しちまうか?ん?」

瑠璃の耳に唇を当てて、チカは低い声でそう言う。
耳の中に 舌 が入ってきた。

「ああっ!」

これが、好きだ。
脳を侵略されている氣分になる。
ああ、支配して。
もっと、支配して。

耳で舌を動かしながら、また、ワンピースの裾から手が入る。
指の動きですぐに、音が立ってきた。

「あ あ んっ、あ、んっ、」

「瑠璃、挿 れていい?」

その、ささやき。
瑠璃は、ゾクッとして震える。
リックがいるのに。
リックの前なのに。

「脱がさないよ、瑠璃の裸は絶対に見せないよ。後ろから、このままで。」

チカの淫 らな舌と指の動きに、瑠璃は仰け反る。

見せたいのだ、リックに。
見せつけたいのだ、リックに。

この女は俺のものだ、と。

「い、挿 れて……」

瑠璃は熱い眼でチカを見つめる。
あたしは、あなたの言いなり。
あなたがしたい事、なんでもしてね。

チカは全部脱いで、用意した。
瑠璃を立たせて、後ろから腰を摑む。

「あ、あっ、あーっ!」

いつもより、硬い、大きい。
瑠璃は仰け反って叫ぶ。

興奮している、チカは。
リックの眼の前で、瑠璃をこんなに悦ばせている事に。

リックがまた自分の手で 擦 っているのが、ぼんやり見える。
三人の息遣いが、淫 らな音が、部屋の中に響く。
瑠璃は口の中に 自分の指を入れた。

「瑠璃。」

チカは瑠璃を動かして、ソファに手をつかせた。
瑠璃の顔のすぐ近くに、リックの切なそうな顔がある。

「口が寂しいのか?口にも 欲しいのか?」

瑠璃は頷いて、振り向く。
色氣のあるチカの蒸気した顔が見えた。

「しゃ ぶってやりなさい、瑠璃。」

そのチカの命令に、瑠璃はどくんと心臓が飛び出そうな衝撃を感じた。
チカに後ろから されながら、リックを口で 愛する。

ああ、そうだ。
そうなのだ。
ようやく、判った。
チカの望み。
これがチカの最大の欲望。

同じモノを 口で愛する。
瑠璃が他の男を、口で慈しんでいる処を、それを、この眼でしっかりと目撃する。

二花を共有していた時に、身につけてしまった歪んだ快感。
同じ男の身体を共有している、身震いする共感覚

だけど、瑠璃の身体を他の男に触れさせるのは危険だ。
だから、チカの味わいたかった口での愛 撫を共有させた。

「ほら、瑠璃。欲しいんだろ?口に。」

ああ、コレを、直で触りたかった。
眼の前にある、コレを。
チカとは違うカタチ。
それ自体の 反り具合と方向が、男によって異なるのだ。
瑠璃は震えながら、柔らかい手で摑んだ。
リックが、びくっと震える。

「Ah…Ruri…」

リックはセクシーな顔で瑠璃を見つめている。
本当に、いいのかい?
そう、問うているような青い眼だ。
だけど。

してくれ。

そう、懇願しているような青い眼だ。

その眼を見つめながら、瑠璃は口をつけた。

「Ah…oh…! Ruri…come! 」

やはり、英国人はこんな風に英語で喘 ぐのだと、当たり前だが改めて実感した。
チカは日本語で喘 いでくれる。
それは、ロンドンで過ごしたのは九歳までだからだ。
身体の愛の営みは、成長して、日本で体感したのだ。
日本で性の情報を見聞きしたから、日本語で喘 ぐのだ。

最初はチカの唾液の匂いと味がした。
さっき、チカが愛したからだ。
チカもこんな氣持ちで、二花を口で 愛したのだ。

そのうち、リックの匂いがしてくる。
違う男の、味。
滲み出てくる液体の、味。

後ろでチカは止まってそのままで、瑠璃を観察していると判る。

愛する瑠璃の中に入りながら、瑠璃は他の男を念入りに口で 愛している。
本当は二花で体感したかった三人での遊びを、今、体験している。

この、危ない快感。
瑠璃は、どんどんと溢 れてくる。
チカが益々 硬くなり大きくなっていくのが、判る。

歪んでしまっている。
今は危うさを楽しむが、このままではいけないと、瑠璃は危険信号を察知していた。

チカを癒やさないと。
あたしたちは、母となり、父となるのだから。

チカはきっと、自分の父母の不貞を嫌悪しながらも、そこに引き摺り込もうとしている、瑠璃を。
同じ苦しみを、妻の瑠璃で味わおうとしている。
それが、最大の歪み。

ああ、だけど。
この、快感。

リックは氣持ちよさそうな熱い吐息を瑠璃の顔に下ろし、瑠璃の頭に手を置いている。
チカの体温を中で腰で感じながらの、他の男の体温を口で頭で感じる、このとろけそうな快感。

リックのコレを愛する。
こうしたかったの。
口で知りたかったのだ。
しかも、チカを中で感じながら。
こんな風に、三人で したかったのだ、ずっと。
おそらく、初めて逢った時から。
チカの欲望、あたしの欲望。
ふたりの欲望。

Ruri…I love you. 」

リックは切さそうに瑠璃の頭を撫でた。
舌で先端をつつく。
裏を舌でなぞる。
浅く、深く、口内に出し入れする。
それを瑠璃は繰り返していた。

「Oh! Ahhhh!  Come…come!  Ruri, I'm coming! 」

瑠璃の頭を押さえてくる。
リックの腰が動いた。

ああ、判る。
チカ、本当ね。
リックのは、渋いわ。

飲み込んでからしばらくそのままで、それから瑠璃は、リックの顔を見ながら吸った。

RuriRuri…愛してる。」

リックは愛しそうに瑠璃の頬に触れた。
チカは、ぐっと瑠璃の身体を引く。
リックから離れさせた。

「Your finished were so early. 」

チカは嘲笑って、リックを見下ろしている。
リックは、かっと赤くなり、怒りを隠そうとしない。

チカは瑠璃をソファの背もたれに手をつかせ、激しく腰を動かしてきた。

「ああ、んっ!スゴいっ!」

いつもより、スゴい。
中の圧迫感が違う。
当たる音と、水の音が響いていく。

「チカ、スゴいのおっ!」

「お前もスゴいよ、瑠璃。べち ゃ べち ゃだ。いつもより、絡 みが凄まじいよ。あ……吸いつく、吸いついてくる!」

脚を伝って落ちていく。
何が溢 れているのかも、もう判らない。
もっと、して。
チカ、もっとめち ゃ くち ゃにして。

後ろからを絶対にリックに見せない。
横にリックの身体がある。
リックの荒い息も、近くで感じている。
また、自分の手で擦 っているのが、判る。

淫 らな空間。
乱れた関係。

何回も、達した。
訳の判らない言葉を、発し続けた。
チカでないと、ここまで狂えない。

瑠璃が何回達しても、チカはまだ動き続けている。
野獣だ。
ずっと激しく、時にゆったりと。
身体の奥で、ゴンゴンと 打たれ続けている。
普段なら興奮すると一回目は早いのに、まだピークが来ない。

リックに早いと言った手前、我慢しているのか格好つけているのか。
それとも。

チカ、さっき出してきたの?

口を洗うと言って、部屋から出てバスルームに行った、その時に。

きっと、リックを口で愛しながら、久しぶりの男の感触と味に 大興奮したのだろう。
リックが出した時、自分も限界だったのだ。

チカは切なそうな顔で後ろから瑠璃にくちづけてきた。
舌が絡 んでくる。

うふふ、リックの味がするでしょ?

瑠璃も舌を絡 ませる。
そのまま情熱的なキスを 交わし 続ける。

「Rick, Come on!

チカは瑠璃の背中から、リックを呼んだ。
リックは本能的なのか、その言葉にふらっと立ち上がり、チカに近づく。
チカは腰を動かしながら、リックのそれを手で摑んだ。

「Ah…! 」

「誰が、イ クのが、いちばん早いかな。」

チカ、ドSだ。
ドS最上級モードだ。
余裕綽々で、ふたりいっぺんに相手をしている。

ゾクッとする。
あたしが愛している男は、こんなにも相手を支配するのだ。
本能で支配してしまう。

リックだとて、普段ならば女性をリードするだろう。
なのに、今はもう、チカの言いなりになっている、自然と。

ノーマルの男すら、惹きつけてしまう。
その、チカの魅力、危なさ。
チカ自身が怖がった支配力。

リックは眼を潤 ませ、口を半開きにし、チカを見つめている。
チカの虜だ、もう。

「あ……イ ク、」

瑠璃は小刻みに震えだした。
そんな瑠璃の手を、リックはハシっと握ってきた。

「Come…、」

その指も、震えている。

「あっ、はっ、」

チカの動きが早くなった。

「ああっ!」

その衝撃の快感に、瑠璃は叫ぶ。
スゴく、いい。
ぎゅうっと中で チカを絞っていた。
中が痙攣するかのように、収縮を激しくしてきた。

「Coming! 」

リックが叫んで、動きの止まったチカは、そこに口をつける。
リックを吸い取っていた。

「あ……ああ、あ……。」

同時に、チカが出していると判る。
それを中で感じながら、瑠璃はリックの手を強く握りながら震えていた。

三人、ほぼ同時に達するなんて。

瑠璃はガクガクする脚と、とてつもない快感に打ち震えて、そのまま倒れそうになるが、後ろからチカに抱えられた。
リックも腕を伸ばしていた。

「触んなっ!」

チカはリックから瑠璃を離す。

「誤解するなよ。瑠璃は俺の女だ。」

愛しそうに抱きしめ、瑠璃の首に唇をつけている。

「お前じゃあ、瑠璃は満足しないんだよ、リック。」

そう嘲笑うように見ている。
瑠璃のぼんやりとした眼でも、リックが悔しそうにチカを見返していると判る。

それでも。
悲しそうだった。
リックはもう、チカに患ってしまったのだ。

「俺たちの刺激を求めた プレイにつきあわせただけなんだよ。Thank you, Rick. 」

そう冷酷に言いながらも、チカがわざとリックを突 き放しているのが、判る。
自分が口で 愛した男に、情をいだかないように。

「I don't mind that. I want you to invite me in this way. 」

それが、リックの本心だろう。
自分でも躊躇しながら、リックはそう口にしていた。
何を口走ったのか、と驚いていた。

「None. Never again.」

チカは、きっぱりと否定する。
そのチカの緑の眼を見ながらリックは首を横に振り、下着を穿いてドレスを整え、バッグを持った。

Ruri、ありがとう。一生、忘れないよ、今日の事は。……あなたは sex で更に美しいね。」

切なげに、虚ろな瑠璃を見つめている。
そして、チカの肩に手を置く。

「私を呼んで、いつでも。味わせてあげるよ、チカ。」

もう惑いがない。
そう美しく微笑み、部屋を出ていった。
玄関も出ていく音が聞こえる。

「……ほら。また、チカの虜を増やしちゃったわよ。」

「まさか。」

チカは瑠璃から 抜いて、瑠璃をソファに座らせる。

「ごめん、瑠璃。」

チカは瑠璃に背を向けた。
その身体が震えているのが判る。

「リックに、瑠璃の善 がってる姿を見せてしまった。あんな……」

「いいの。氣持ちよかったのよ、瑠璃。」

リックはこの件を絶対に他人に漏 らさないと確信がある。
チャスにも話さないだろう。
いや、話せないだろう。

「瑠璃にさせてしまった。」

「……うん。でもねえ。」

瑠璃はチカの手を引き、握った。

「あたしたち、本当は求めていたのよね。三人で する事。判っちゃった、物凄い氣持ちよくて。チカもよね?」

「ごめん。」

身体が大きく震えている。
涙声になっているのも、判る。

「一回、体験したから満足したわ。」

「もう、しない。こんな事。」

「ええ。」

瑠璃は、楽しかったと偽りなく言えるが、チカには重い後悔が残ったのだ。
瑠璃は氣怠く長い黒髪をかき上げた。

「こういう時、女の方が打算的って、よく実感するのよね。楽しかったんだから、それでいいじゃないって、記憶として真っ直ぐ留められるから。」

「そうなんだろうね。俺には、ムリだ。生涯、後悔する。」

チカがこんなに悔やむのならば、次は無いと決意した方がラクだ。
瑠璃は、またしてもいいとは思うが。
チカの背中を抱きしめる。

「瑠璃、良かったの。狂っちゃうかっていうくらい。チカも、そうよね?」

「……良かったよ。」

互いの隠していた同じ欲望を叶えた。
瑠璃には、すっきりとした爽快感がある。
だから、もういい。

「リックには悪い事したわね。チカに夢中にさせちゃったから。ねえ、これからも、リックにしてあげたらいいし、チカも口でしてもらったら?」

「リックにはしない。情が湧くと、厄介だ。もう、恋愛ごっこは要らない。」

「……そうなのかもね。」

こうして、自分勝手に三角関係を作ってしまったのだから。
リックはこれから、身体が自然とチカを求めてしまうだろう。
瑠璃とチカ、どちらにも惹かれてしまった。
チャスだけでなく、ふたりいっぺんに惹かれてしまう状況を、もう一度作ってしまったのだ。

それは、罪。

地獄でありながら、あの甘美さを再現させ、より感じたかったのだ、あたしたちは。

チカは振り返って、瑠璃を勢いよく抱きしめた。
子どものように泣いているチカの顔が見えた。

「けど、俺、堪らなく興奮したんだ!瑠璃を独占したいのに、誰にも見せちゃいけない瑠璃をリックに見られて、舐 めさせて、興奮したんだっ!」

「うん。」

泣きじゃくるチカを、優しく抱きしめる。

「それに俺、やっぱり男が好きなんだよ!愛情は要らない!ただ、男の身体に興奮する!」

「うん。してきて、いいのよ。」

男と一回限りの遊びをしてきていい。
瑠璃は、それをしっかりと許可した。

「二花以外の男を知りたかった……俺はその欲望を閉じ込めていたんだ。瑠璃がいるのに、それはいけない事だって。」

「判るわ、その葛藤。」

だからこそ、この機会を伺っていた。
三人で快楽を味わえるチャンスを。
リックならば、好条件だったのだ。

「チカが望むなら、また違う人と三人で していいのよ?」

「いや、ダメだ。なんで、俺だけの瑠璃のあんな姿をリックに見せてしまったのか、悔いしかないんだ。」

「そうね。」

それはそれで、逆療法だったのかもしれない。
癒やしが起こったのだ、チカに。
堰き止めていた自分の怖さを、ついに思い知ったのだ。

「いい子よ、登規くん。」

チカの頭を撫でる。

「だから、いいのよ。男の人と遊んできても。」

チカは涙を流しながら、瑠璃を見つめる。

「こんな俺でも、いいのか?」

小さい子どものようだ、まるで。
こんなに大きな逞しい身体なのに。
瑠璃は微笑んで頷く。

「俺の事、嫌いにならない?」

「ずうっと、大好き。」

チカにくちづける。
本当よ。
あなたが望む事全て、あたしは受け入れられるの。
それが純粋な願いならば。

全て脱いで、バスルームでシャワーを浴び、抱き合いながら激しくキスを交わした。
長い間、そうしていた。

こうして、全ての嘘を解き放って、あたしたちは夫婦になっていく。
嘘は、要らない。
それが社会的通念で世間に受け入れられなくとも、あたしたちは本音で向きあい続ける。

「あなたがリックを可愛がる処、とても興奮したの。」

「僕も、瑠璃に見られてると思うと、堪らなく興奮したんだ。」

「だけど、チカが攻められてるのは見たくないわ。」

「それは、俺も見られたくないよ。しかもー」

チカは瑠璃の手を取り、自分の尻に当てた。

「冗談で掘られたいって言っても、本当はイヤだ。掘るのはいいけど、掘られるのは、男にされたくないんだ。」

「チカらしいわね。」

「瑠璃に、されたいんだよ。」

チカは、はにかんでいる。

「スゴいものね。急に飛び出てくるんだもん。」

「快感……」

その感触を想い出して、チカはうっとりとしている。

「してあげる、トウチカくん。」

「うん、して。」

小さな子どものようなチカが愛おしい。
瑠璃だから、こんなに弱い部分を晒してくれるのだ。
それが瑠璃の歓びだった。

…………………………………………………………………………

その知らせが飛び込んできたのは翌日だった。

「そう。」

「うん。」

チカはスマートフォンに入った報告を瑠璃に伝えた。

「お葬式は?」

「まだ未定だね。おそらく一週間後くらいかな。」

「一週間!」

日本の感覚にはない、葬儀までの長さだ。

「なので、瑠璃。」

「ええ。そうして。」

チカがはっきり言わずとも、判る。
予定ではもう帰国の時期だが、葬儀が終わるまでは滞在を伸ばす。
瑠璃がモデルをするブランドの会社の会長が亡くなったのだ。
せめて、葬儀には出たい。

「この時が近いうちに来るって判っていても、ショックよね、Amelia。」

「そりゃあね。」

母親を早くに亡くしたチカだからこそ、共感もある。

「チャスは……」

「明るく振る舞うだろうね。仕事も変わらずこなして。」

チャスの笑顔が浮かんでくる。
葬儀の前、近いうちに逢おうとは考えていた。

滞在が伸びたので、チカは日本での帰国後のスケジュール変更をこなし、逆にこちらでの空いた時間を、行けていなかったバッキンガム宮殿や美術館や博物館、公園、ショップなどを次々と訪れた。
何回も古い二階建てバス、ルートマスターを好んで乗った。
チカが嫌がったが、また美容室に連れていき、サイドとバックを刈って貰った。

チャスに呼ばれたのは会長の訃報から三日後だった。
Ameliaはおらず、瑠璃とチカは、変わらず活気あるその社屋のミーティングルームでチャスを待った。

コンコンとノックが聞こえ、返事を待たずにドアが開く。
これだけでチャスが来たと判る。

「ありがとう、来てくれて。」

チャスは笑っている。
それでも、少し痩せたようにも見えた。

「ルリのWedding dress作ってるけど。今、急いでこれを作ったんだ。」

椅子に座っている瑠璃は、ぽかーんとチャスを見上げていた。

「チャス、随分と流暢ね、日本語が。」

驚きの進化だった。
躓きもなく、頭に浮かんだ意思を日本語ですらすらと、日本人並みのスピードで伝えてきたのだから。

「So? コウヘーのおかげ。」

チャスは褐色の前髪を掻き上げた。
髪に余り手入れがされていないように見えた。
洒落た人なのに。
瑠璃は、よくチャスを観察していた。

忙しいから、というより、わざと忙しくしているのかもしれない。
悲しみを感じないように。

「コウヘーくんっていうの?彼氏。」

「Yes! 」

「どんな子?」

「カワイイ。オレより、しっかりしてる。和食、作ってくれる。オイシイ!」

顔かたちが知りたいのだけどな。
だが、瑠璃は微笑んでチャスの笑顔を見ている。

トーチカ~瑠璃シーン⑥前編
………………………………………………………………………

それが罪と知っていても、愚かだと感じていても、淫 らだと判っていても。

これが本音。
そのままの偽りのない姿。
瑠璃とチカは、そこを体験していく。

互いの本音を晒して、互いに受け入れていく。
そのままの自分を、そのままの相手を。

相手の全てを、ただ受け入れられますか?

これは葛藤が起こるだろう。
独占欲に苦しむだろう。

それを瑠璃とチカは、超えていく。
始まりの不義理から。

俺とお前の攻防戦。
次回で、ひとつの決着。

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お読みくださりくださり、真にありがとうございます!

トーチカ〜瑠璃シーン⑥前編11

小説です。

人に言えない嗜好や秘密、官能
人間はそれをどう思うか
自分でどう対処していくのか。

みんな違って、みんないい。
人と違う自分を異常と責めないで。

これはアメブロで書いている四人の10年間の人生、官能でもある小説トーチカのミラー版?です。
記事を削除されてしまうので、はてなさんでチャレンジしてみます。


瑠璃シーン⑥のキャッチコピーは、
俺とお前の攻防戦。
(チカ曰く、なんだそうな。)

じわじわくる、サスペンス劇場。

半年以上続いたトーチカ~神楽シーン⑥が終わり、
トーチカ~瑠璃シーン⑥始まりました。
トップモデルとなった瑠璃の真骨頂とも言える、瑠璃シーン⑥となります。

瑠璃の魅力、瑠璃チカの結婚式、そして妊娠までを書きます。

神楽シーン⑥が男眼線のエロならば、
瑠璃シーン⑥は女眼線のエロとなるでしょう。

神楽シーン⑥での、瑠璃シーン側では、何が起こっていたのか?
真実は、こんなだったという意外性満載!

神楽シーン⑥のテーマは、パートナーシップ、そして逢えない長い夜を越えて。
瑠璃シーン⑥でも、テーマはパートナーシップ、でしょう。


トーチカ~瑠璃シーン⑥前編10
瑠璃のヌードの写真をチカは撮り始める。
そして、瑠璃の縛られたい、痛くされたいという願いを叶えていく。
それは同時に自分の欲望だと、チカは知った。

↑これ計11回アップしたのです。
熱に浮かされていた時だったので、消されても、数日かけてしつこく懲りずにアップしていたのか、と平常時に戻ると改めて。驚く。

あきらめないもん。


何が削除原因か?
とにかく様々に固有名詞がダメみたいですね。
あっさり、いいときもあるんだけど。

TLやBLも、修正すると全年齢対象オッケーになるけど、露骨描画だと18禁になるように、表現をぼやかすと、いいみたいね。



わたしが書く小説というのは映像で見えてくるのを文章化しているのですが、この文章で女性の(もちろん男性もね)オ ーガズムのお手伝いにもなればいいな、とも思っています。


トーチカ神楽シーン①
東三河に住む、未来を知っている少女
神楽の眼線
神楽シーン⑥で、東三河から神奈川に嫁入りしました。

トーチカ~瑠璃シーン①
神奈川に住む、ティーンズモデルの美少女
だった瑠璃の眼線
今は世界に立つスーパーモデル

神楽シーン瑠璃シーンの同時期を交互に書いていきます。
どちらにも童顔、永遠の少年の二花(つぐはる)が絡んできます。

トーチカのこれまでの話のリンクはこちらから

トーチカ以前の物語はこちら↓

来る潮帰る波
神楽の母が亡くなったことを、その兄(神楽の父になった人)が回顧する話

実になる花~追伸
モデル瑠璃の母、女優実花と、父、アーティスト椎也の物語。


ロンドンの街並みのざわつき、鳥のさえずりとか聴こえてくる感覚。

BGMにミニーリパートン"Lovin'g you"とか、いいですよ。

"カルメン組曲"。
今回、チカが語ってくれます。
オペラカルメンの作中曲は
日本人はどれも聴き覚えがあります。


ブログに書いたけど、つるの剛士さんの唄う"You're the only shinin' star"、聴き惚れたのです。
でも、ミポリンでもいい!
瑠璃もチカも互いにこんな感じでロマンチックに恋をしてます。






トーチカ~瑠璃シーン⑥前編11


ずっと来たかったジョージアのホテルのアフターヌーンティーを味わった。

「Lovely! 」

前回のロンドンウィメンズコレクションでの、各々のブランドで実際に披露されたドレスやバッグなどをモチーフに色とりどりの菓子が並ぶ。

瑠璃が来たベージュのドレスもクッキーにされている。

「これが世界中の人間に食べられてるかと思うと……」

チカは軽く舌打ちした。
隣りの瑠璃にしか聞こえない程度だが。

「俺の瑠璃たんなのに。俺だけの瑠璃るりなのに。」

嫉妬で震えている。

「あたしじゃなくて、ドレスよ。」

肩をしっかり出した丈の短い赤いドレスの瑠璃は、そんなチカが愛おしくて微笑む。

「瑠璃の着たドレスだ!ほら、ここに写真も飾られてる!世界中の人間が、お前の写真を見ながら、お前の着たドレスを喰うんだ!」

チカにしたら、耐え難い凌 辱なのだ。
だから、今季のアフターヌーンティーの内容が判っていながら、なかなか来たがらなかったのだ。

「いいわ、なら、あたしが食べるから。」

瑠璃はひょいと、そのドレス型クッキーを摘んで口に入れる。

「あっ!」

チカは慌てて、瑠璃の歯に挟んだそのクッキーを奪い、口に入れた。

「もうっ!」

反応が読めていても、そんなチカが可愛く思うが、瑠璃は自分の着たドレス型のクッキーを奪われて、ふくれっ面をした。

「瑠璃るりのドレスを喰ったぞ……俺は本物のドレスも食べてもいい。いや、中身の瑠璃を喰っちまうぞ。」

わざと、はあはあとした息遣いで至近距離で瑠璃の顔を見ている。

「ドレス食べたら、大変よ。」

「いや、俺なら大丈夫だ。瑠璃の着たドレスなら、消化出来る。俺の栄養となり、血肉になるんだ、瑠璃が。」 

ぺろんと、長い舌が瑠璃の唇を舐 めた。
チカだから、もはや人前でも、そんな行為に恥ずかしげの微塵も無い。

「瑠璃るりの体液も 飲んで、瑠璃たんの肌の老廃物も食べて、あとは何食べようかな。瑠璃っちなら、なんでも食べたいっ!」

新たな愛称が増えたなと感じつつも、瑠璃はにこやかに笑みながら、チカの口を手で塞いだ。
このレストラン内で、何処の誰が日本語を理解しているか不明なのだから。

「恥ずかしい事を人前で言うのは、やめなさいよ。」

チカは少々赤くなっている瑠璃の手を外し、耳元に唇を寄せた。

「いつも、瑠璃を噛みちぎって 食べて、ってねだるクセに。」

どうせ、そうやって瑠璃の反応を楽しむのだ。
瑠璃は顔に出さないように懸命に堪えた。
チカは、シャンパンを飲みながら、ふっと笑う。

「可愛いよ、瑠璃。食べてぇって、本当は言いたいのにね。我慢してる、その顔、堪らないよ。」

言葉の途中で瑠璃の身体が小刻みに震え出したのを、チカは氣づいているからこそ、その近さで瑠璃の顔を微笑みながら観察している。

「ここにいるみんなは、瑠璃を女王さまだと思ってるかな?いじめられて悦ぶ瑠璃だなんて、知らないよね。こんなに俺に従順な、超ドMな瑠璃なのに。」

煽りがエスカレートする。
瑠璃は、はあっと熱い息を吐いた。
堪えているが周囲からは、チカの囁きに瑠璃がうっとりと喜んでいる、甘いカップルのようには見えるだろう。

チカの熱い手のひらが、瑠璃の剥き出しの膝に触れた。
瑠璃は大きく揺れる。

「よく、声を我慢したね。ああ、だけど、顔がもう限界かな。」

判っていて、さらにいじめるのだ。
この、チカの嬉しそうな表情に、さらに子宮が熱くなる。

「瑠璃の身体、最近とても熱いんだ。燃えてるね。特に、熱いよ……溢 れ出してるよね、今。」

チカには、瑠璃のちょっとした身体の動きや表情で読めるのだ。
瑠璃は恥ずかしさで、ぎゅっと膝同士をきつく閉じて、膝の上のチカの手を摑んで離そうとした。

「ちゃんと我慢しないと、ご褒美はないぞ。」

「あっ……」

瑠璃の小さな喘 ぎに、チカは笑った。

「声が出ちゃったね。瑠璃の負けだ。力入れて膝を閉じたから、余計に刺激されたんだよ。こんないや らしい娘には、ご褒美は無いね。」

瑠璃は首を横に振った。

「ごめんなさい。瑠璃、なんでもします。お仕置きキツくしていいから、ご褒美ください。」

そんな懇願すら顔を変えないように、静かに小声で呟く。
この恥ずかしさも、快感、だ。

「瑠璃は、とてもいや らしい娘だね。こんな人前で、恥ずかしいおねだりするんだ。おねだりしたら、また溢 れちゃったね。もう、瑠璃はびち ゃ び ちゃですって、言いなさい。」

チカの低い声が子宮に響く。
今すぐ、この男の精 子が欲しいと、子宮が熱く 疼 き出す。

「瑠璃、いや らしいの。もう、び ちゃ び ちゃです。止まらないの。登規さんの指が欲しくて、じゅん じゅん してます。もっと、ぐ ちゃ ぐち ゃ にして。」

「うん。瑠璃は恥ずかしい事を言われるのも言うのも大好きだからね。こんな人前なのに、俺の指が瑠璃の ぐち ゃ ぐ ちゃ な中を 掻き 混ぜて 欲しいんだな。」

チカは嬉しそうに頷いている。
瑠璃は震えて口元を手で押さえた。

「瑠璃、これ以上 溢 れさせたらドレスが汚れるぞ。」

「いや……。」

「lavatoryに行きなさい。」

チカは瑠璃の限界点をよく知っているからこそ、こうして人前で瑠璃が悦ぶ範囲で楽しむのだ。
チカはニヤッと笑い、瑠璃の耳に口をつけて言う。

「下着を脱いでおいで。仕方ないだろ?汚しちゃったんだからね。この指で少し 混ぜてきなさい。で、洗わないでね。」

瑠璃の右の中指にくちづけた。

「あっ、」

「声出しちゃダメじゃないか。」

「―ごめんなさい。」 

瑠璃は、ふらつきながらも立ち上がる。
しかし、颯爽と美しく歩いていった。
トイレの個室で、がたっと膝が崩れるように座り込む。

チカの、この人前での煽りが最高だ。
濡 れた下着を脱いで、長い指で 弄 りだす。
もうすっかり潤 っているから音が響くので、最初はゆっくりと動かした。

「あっ、」

トイレには誰もいない事を確認しているから、音に構わず 指を動かした。

「んっ、くっ、」

大量に液体が飛び出てくる。
登規さん、こんなに手が汚れちゃったわ。
瑠璃は震えながら、頭の中でチカに対して、そう伝えた。

これが、距離の隔たりが関係あるのかどうかは判らない。
だけど、チャスに欲情された時に瑠璃の危機を感じて、チカは助けに来たのだし。

手をペーパーで拭いて、もう一度、指を 挿 れる。
瑠璃、こんなにいや らしいの。
登規さんに調 教されて、こんな恥ずかしい事が悦びになったの。
登規さんは、どう?
瑠璃がこんなに 淫 乱で、嬉しい?

達してから立ち上がり、瑠璃は何も穿いていない 股に恥ずかしがった。
これ以上濡 れてしまったら、太腿に垂 れてきてしまう。
人にバレる訳にはいかない。
その羞恥心が、余計に瑠璃を興奮させる。

瑠璃、我慢するね。
我慢するから、ご褒美、頂戴ね。

瑠璃は右手を使わないように左手を洗い、トイレから出てきて、平然とした顔でチカの横に座った。
歩いてくる処から、チカはじっと瑠璃の姿を薄い緑の眼で観察していた。

瑠璃がチカの顔の前に出してきた右手に、チカはくちづける。

「潮?」

愛おしそうにその手に唇を動かしながら、瑠璃の眼を真っ直ぐ捉えている。

「だと、思うわ。」

その延長線上で、中指を咥 えてくる。
他人には、恋人たちの仲睦まじい触れ合いに見えるだろう。
しかし、瑠璃は声を漏 らさないように、顔に出さないように、とてつもなく身体を硬直させていた。

「いい味だ……美味しい。瑠璃の甘さが、僕は何より大好きだ。このお菓子たちよりも。」

その囁きに、口中の密やかな舌の動きに、瑠璃は眼を潤 ませる。

「それ以上、顔に出したらダメだからね。」

指を口から離して、チカは瑠璃を見つめ、歯止めをかける。

「可愛いよ、瑠璃。恥ずかしい事が大好きな瑠璃。命令されて悦んで、ホテルのレストランのlavatoryでindulge in onanismなんてね。人にはとても、話せないね、本当の瑠璃の姿を。」

チカだけがこんな瑠璃の本性を知っているからこそ、快感なのだ。

「さあ、食べるよ、美味しいお菓子を。」

「―ええ。」

「僕はいっぱい食べるからね。その後の後、だ。」

チカは、にっこりと微笑む。

「瑠璃を囓るのは、その後の後だよ。」

「はい。」

涙眼になりつつ、サンドイッチを口にした。
長い事焦らされるのが判っているから、栄養補給もしておかないと、と学習したのだ。

チカはお替わりをして、瑠璃の着たドレスモチーフのクッキーを瑠璃に食べさせた。

「美味しいだろ?」

「美味しいわ。」

「本物の瑠璃は、もっと美味しいんだよ。」

「瑠璃は登規さんに食べてもらうの。」

「当たり前だろ。美味しく味合わせて貰うから。」

今日はどんな風に味合われるのだろう。
先日はベッドに寝転んだ瑠璃の上に大量の薔薇の花弁を蒔かれ、瑠璃を味合うと共にチカは花弁も食べていた。
花弁を乳 首の上に置いて、そのまま吸っていた。
その身体の記憶もまた、瑠璃を疼 かせる。

常にいちゃつきながら食して、席を立った。

「あの、瑠璃ちゃん。」

その後ろ姿を声を掛けられた。
瑠璃はにこやかに振り返る。
三つ先のテーブルに座っていた東洋人風の女性だった。

「ここで瑠璃ちゃんに逢えるなんて嬉しい。ファンです。握手、して頂いても宜しいですか?」

「ええ。」

ほら、日本人はあちこちにいるわよ。
瑠璃は恥ずかしい会話も小声でした事に心底安堵したが、それでももし聞かれていたら、と思うと焦っていた。

食後にまたトイレに行き手をしっかり洗っているので、瑠璃は安心して艶やかに右手を差し出した。
女性が、手を握り返す。

「柔らかい手!見たよりももっと、華奢ですね。」

褒められた滑らかな手。
以前はもっと力強く、手入れもせずに怪我をしても氣にしなかった。
チカに手の動きをしっかりと観察され、自然と柔らかな女性の仕草になった。
全部、チカのおかげなのだ。

瑠璃が女の中の女として、艶やかに魅力的に淑女として且つエロティックに佇んでいられるのも、チカが瑠璃を扇情させていったからだ。

「ありがとうございます。」

褒められた事がただ嬉しくて、瑠璃はにっこりと微笑んだ。

「わたし、ロンドンのcosmetics shopで働いてます。もし、何かあれば、よかったらお越しください。瑠璃ちゃんのお手伝いが出来たら光栄です。」

彼女は店のカードを渡してきた。

「そうなんですか?是非、伺わせて頂きますね。」

化粧品が大好きな瑠璃だ。
店で、じっと化粧品を見ているのも大好きなのだ。

「ええ、是非!」

瑠璃の返事に、彼女もとても喜んでいた。

「お噂通り、とても仲が宜しいんですね。まるで映画を観ているようで、おふたりに見惚れてしまってました。お似合いで、本当に映画のシーンのようでした。」

彼女は赤い顔で瑠璃とチカを見上げて興奮している。
見られていた。
本当は淫 らなやり取りをしていた処を、観察されていたのだ。
瑠璃は恥ずかしさから、組んでいたチカの腕をさらに、ぎゅっと摑む。

「恥ずかしいです!どうしてもロンドンだと氣が緩んでしまって、人前でも触れ合ってしまって。」

「それだけ仲が宜しいんですね。ステキです!広告でも、とても自然に仲良さそうに見えてましたよ。」

褒められた、という事にしよう。
瑠璃は照れながらも微笑んで頭を下げた。

「お忙しい中、ごめんなさい。握手、ありがとうございます。瑠璃ちゃんの、更なるご活躍、楽しみにしてます。」

彼女は瑠璃とチカににこやかに頭を下げて、席に戻っていった。
金髪と銀髪の女性三人とアフターヌーンティーに来ていたようだ。

「ほら、チカ。お願いだから、普通の声で恥ずかしい事言わないでね。」

日本人が、日本語の判る人間が、何処にいるか判らないのだ。

「恥ずかしい事?俺がいつ、恥ずかしい事を言った?」

「瑠璃の体液を 飲むって言ってたじゃないの。」

小声でそう口にし、瑠璃はチカの腕に、赤らめた顔を隠した。

「俺にはちっとも恥ずかしくないな、別に人に知られても。何故なら、瑠璃の体液は  聖水だからだ。清らかだ!何もかも清いのだ!瑠璃さま、わたくしめに聖水をお与え下さいっ!」

そう堂々と、わざとらしく語る処が恥ずかしいのだ。
瑠璃はチカの脚を軽く蹴った。

「ああ、いいぞ。そうして人前で蹴ってろ。瑠璃がSに見えるかな、人からは。瑠璃っちがこんな超ドMだって知ってるのは、俺だけだからな。今すぐ、可愛い瑠璃っちの 後ろに、尻尾 ず ぶっと 挿 して  やり てえ。尻 振れよ、その姿で。」

恥ずかしいから、再度蹴った。
チカはニヤニヤとしていた。
この、ドS男。
大好き、このドS。

「手首 縛ってな。バニーガールの格好して、尻尾生やして、ケツ 振るんだよ。」

「嬉しいけど……バニーガールの衣装はどうするの?」

それも我ながら似合いそうだ、と瑠璃は頭の中で想像した。

「買ってやる!ああ、いろんな衣装が欲しいっ!明日、買うっ!こっちなら、身長の高い瑠璃に、ぴったり合うんだ!おっ ぱい デカいから、胸まわりは合わないかもだけど!」

チカも想像したのか、少しはあはあと息を乱した。

「いちばんいいのが、セーラー服だけどね。禁断の教師と生徒編 in the classroom。」

「チカ、ストーリー作るの好きよね。」

チカのシナリオで、それを演じさせられる事も多々ある。

「瑠璃の演技もいいんだよ。最高だよ、『先生、やめてっ!』なんて、もー堪んねえ。」

チカの迫真の演技の方が凄いけれど。
そう思ったが、瑠璃は黙って微笑んだ。
背後にジョージアが見えたからだ。

Ruri, Touchika, Thank you for making time for we today.  」

瑠璃はジョージアに手を差し出す。
ジョージアは微笑んで瑠璃の手を握った。

「Really delicious! Thank you, Georgia. 」

本来ならば予約を随分前から入れておかないと、このアフターヌーンティーは食べに来られないのだが、前々日に連絡を入れた瑠璃とチカには優遇をしてくれる。
それが嬉しくもあり、有り難かった。
それも、ジョージアとチカが昔馴染み、という間柄ではないと無理なのだが。

だから瑠璃は、今自分がここにいるのは全て、チカのお陰だと感謝している。
瑠璃に世界で通用する魅力が無ければ、幾らコネがあろうと叶わなかったが。

あたしは、コネに恵まれている。
両親、そしてチカ。
もしくは見えない部分で、二花に支えられている。

それも才能だと、二花は言った。
偶然にあたし、なのではなく、あたしだからこそ、この世界に立てたのだ。
と、思うようにしている。
でなければ、世界四代コレクションモデルに成りたい、専属モデルに成りたいというモデルたちの嫉妬をかわせない。

だけれども。
自分を鏡に映せば、成る程、世界に通用する美人なのだと納得する。
それが日本人だからこそ、神秘性が増し、この西洋の地でウケるのだ。
その瑠璃の頭の声を読んだのか、チカはニヤッと笑った。

「We are thankful for simply because you come to the restaurant. Only by the word of mouth, the reservation from a Japanese is worthy. 」

ジョージアの言葉通りに、瑠璃がこのアフターヌーンティーを食べに来たという口コミだけで、本当に日本からの観光客からの予約が絶えないならば光栄だ。

「But it's painful to me that her dress-shaped biscuitis eaten by various people. (だけど、彼女のドレス型のクッキーが様々な人たちに食べられている事は、僕の痛手なんだ。) 」

「Touchika, You are the incarnation of the jealousy.  (登規、君は嫉妬の権化だね。)」  

ジョージアは少々呆れて、チカを見上げた。

「Yes, indeed! 」

チカは自信を持って、威張りながら肯定した。
その緑の眼を輝かせながら。

「また、帰る前に、ここでフレンチ食べような。」  

ホテルを出て、用意してくれたブラックキャブに乗り込む。
チカは嬉しそうに瑠璃の腰に手を廻した。

「フレンチなら、瑠璃っちのドレスのクッキーは現れない!」

「サプライズで出すかもね、もしかしたら。」

瑠璃は上目遣いでチカを見上げる。

「有り得るな。俺は相当、ここのホテルとGeorgiaにいたずらしたからな。いたずら返し、あるかも。」

大人に自分の幼少期のいたずらを返されるだなど、どれほどのいたずらをしたのか、心配になってしまうが。

「さあて。瑠璃を 嬲 るのは、まだ先だ。」

「我慢……出来ないかも。」

瑠璃は大きく甘い息を吐く。

「我慢出来ない?なら、垂 らすのか?人前で。」

瑠璃の耳元でささやく。
運転手が日本語を理解している場合だとてある。
だから、聞こえないように小声でふたり、しかも声に出して会話するという際どさを楽しんでいるのだ。

「び ちょ び ちょに垂 らしてっていいよ。瑠璃が、それを望むならね。」

「望む訳、ないわ。」

そんな、淫 らで顕な姿を見せていいのは、チカだけだ。

「瑠璃、今夜はムリヤリ 設定でするぞ。」

「―ええ。」

喜んで!
と瑠璃は返したかったが、溢 れてきそうで、ぐっと全身で堪えていた。
シナリオ通りに、瑠璃がやめて!と抵抗する中、チカが力強く後ろから押さえて 身体中を愛 撫していく遊びだ。

あの、犯 され感が堪らないのだ。
チカが興奮しすぎて、服を破いた事もある。
ふたりの、そんな遊びを楽しんでいる。

瑠璃がオペラを見るのは初めてだった。
ロンドンに滞在する中、チカに連れられてミュージカルや小舞台をちょくちょく観に行った。
観劇も、表現するという学びになるからだ。
そうでなくとも、観劇は純粋に楽しい。
勿論だが台詞はずっと英語ばかりなので、途中、瑠璃は頭が疲れ、演者の台詞が頭に入らなくなり、眠くなるが。

オペラは特に緊張する。
お洒落な上流な大人の趣味、という未知の世界だからだ。

「まあ、フランス語だから、瑠璃にはワカンナイだろうけどね。」

「ワカンナイの知ってて連れてきたのね。」

席に着いて、瑠璃は軽く鼻息を吹く。

「オペラってずっと独特な唄だから、何語だろうと、よくワカンナイよ。でも、世界観や演技は必見だと思うけどね。」

チカが、そう勧めるのだ。
瑠璃は楽しみにした。
おそらく、ここは、とても眺望のいい席なのだと思う。
チカが独自に席を取ったのか、何かのコネで取れたのかは、瑠璃には判らない。
だけど、瑠璃の何かしらの学びになるように、チカはいつも力を注いでくれるから、全てを任せているのだ。

世話をしてくれる男がいないと、自分は何も手配が出来ないと瑠璃は知っている。
それをずっと父がしてくれていたし、今はチカがしてくれる。

そして、万が一チカがいなくなったとしても、瑠璃の世話をしてくれる男は後を絶たないとも、瑠璃は知っている。
自分はそういう女なのだと、自覚している。

だから、自分が何かをする必要もない。
逆に、しては、いけない。
瑠璃は美を追求し、それを表現するのみだ。
その為に快楽を求め、官能の世界を味わい切るのだ。

カルメンは、そんな女だよ。まあ、瑠璃のような母性はなくて、生粋の悪女だけどね。」

自分だとて、見方が違えば悪女、と罵られる事も今後起こるかもしれない。
その氣は無くとも、男たちを誘惑していくのだから。
身体が男を求めてしまうのだから。

しかし。

瑠璃は隣りのチカの顔を見つめた。

この男が、そうはさせないだろう。
瑠璃を貶める発言には、世間を導かせないだろう。

チカは紳士に微笑んで、そんな美麗な瑠璃を眺めている。

「僕は、あなたの為に用意された花婿なんだろうね。」

「そうね。」

誰が、どうして、その道を選んだのか。
これは、何のゲームなのか。
この道なりを俯瞰して楽しいのは、誰だろう。

カルメンの振る舞いが官能的なオペラを観ながら瑠璃は、チカに今、いきなり後ろから されたいと、ぼんやり考えていた。
どちらの 穴も、続けて 犯 されたい。

チカはそんな瑠璃の手を柔らかく握ってきた。
願望は、すっかりチカに読まれているのだろう。

最初から、きっと。
チカは瑠璃の願望を読んでいた。
あんなに憎い男なのに、いつしか、チカに後ろから 犯 される事を夢想していた。

ムリヤリ されて、ダメと言いながらも、感じきっている自分を想像していた。

美女のジプシー、カルメンは、自分に唯一靡かない男、衛兵のホセを誘惑する。
ホセの人生を狂わせ、嫉妬により、カルメンはホセに刺し殺される。

「よく聴く曲が、カルメンの曲だったのね。」

観劇後、チカに腰を支えられ、瑠璃はチカの腕に密着して歩いていく。

「ああ。俺は日本に来てから運動会でカルメン前奏曲を聴いて、驚いたよ。なんで子どもの運動会に、官能的で男を誘惑する事が楽しみの、結局、男に刺し殺されるジプシーの女の曲が流れるんだって。」

確かに、チカ眼線なら、そうだろう。
登規少年にとって、日本は神秘的でありながら、訳の判らない国だったのだ。

「殺されちゃうのね、男の嫉妬で。」

瑠璃は、くんくんとチカの脇の匂いを嗅いだ。

「ああ、殺しちゃうんだよ、男は嫉妬で。」

チカは愛おしそうに、そんな瑠璃を眺めている。

「あたしも、殺されちゃうのね。」

「血は出さないけどね。殺しちまうぞ。」

チカの宣言した通り、瑠璃の脳内をチカに冒される。
全てチカで埋め尽くされる。
瑠璃の思考の欠片も無くなり、この身体はチカに玩 ばされる、生涯。

それも、最高のお仕置きだ。

「俺は動いて喋る瑠璃が好きなんだから、それは最後の手段だ。俺の手の内に留める為の。お前が他の男の子どもが欲しいというなら、俺はそれを実行する。」

暗い場所だから、チカの眼は褐色に見えるが、眼つきが厳しくなっている。

「いいの、あたしは、そうされたとしても。」

それが脳の死であろうと、本望だ。
犯罪にはならない、あなたに殺されるあたし、なのだから。

「そんなのは極刑だ。そうさせないように、しろよ?」

「判ってます、登規さん。」

だからこそ、チカとこうして会話が出来、自分の意思で触れる事が出来るというのが、有り難さすら感じる。

「素晴らしかったわ、カルメン!何唄ってるのかはちっともだけど、でも、人の演技って言語が判らなくても通じるの。あたし、もっと全身で表現しないといけないわ。」

芸術を堪能すると、その完璧さに刺激される。

「ああ。その意欲は大切だね。瑠璃は常に前進あるのみだ。」

「ええ。」

笠田に最初に言われた事を思い出す。
瑠璃は止まったら朽ちるタイプなのだろうと。
例え失敗をしたとしても。

誰に止められようと自分が決めた事に押し進むから、失敗もするだろう。
全力で傾けた事だから、嘆きも深い。
だが、その分、勝ち得た悦びはとてつもなく大きいのだろうね。

笠田のその言葉は、その後ずっと、瑠璃の励みになっているのだ。
だから動ける、迷いがあっても。

家に帰ると、チカはいきなり乱暴に瑠璃の手首を後ろ手に 拘 束した。

「いや、や……やめて、やめてくださいっ!」

チカのシナリオ通り抵抗する瑠璃に、チカは胸を 鷲掴みにして、顔をテーブルに押しつけた。

「何がイヤだよ、この変態女。下着も 着けずに、こんなに濡 らしてやがる。」

音を立てて 掻 き混ぜるから、瑠璃はただ、喘 いでしまう。

「なあ、されたかったんだろ?男に ムリヤリ 後ろから 犯 されたかったんだろ?だから、下着を脱いでたんだろ?すぐに 硬いの 挿 れて 欲しかったんだろ?」

「あ……イヤっ!」

いいの、こんなの、ゾクゾクする。
チカの声が本氣で恐ろしいから。

「イヤ、だ?床に、こんなにいや らしい液を垂 らしやがって、この変態女。してくださいって、言えよ。犯 してくださいって、言えよ。」

指の本数が増えて、瑠璃は叫ぶ。
いい!良すぎる!
口端から涎が垂 れていっているのが、意識が飛びそうな自分でも判る。

「やめて……」

息も絶え絶えに懇願する。
本音は裏腹だ。
やめないで!
犯 して、もっと!

「身体は、こんなに正直だな、お姉さん。欲しいんだろ?挿 れて 欲しいんだろ?」

「……って、」

「何?聞こえねえぞ。」

瑠璃の長い黒髪を左手に絡 ませ、ぐっと後ろに引っ張る。

「はっきり言え。」

髪を引っ張る事で、瑠璃の顔を自分に近づけさせる。
ああ、こんなに乱暴なのは、初めてだ。
これが、とてつもなく嬉しい。

「……れて、」

「聞こえねえ。」

パーンと 尻を 叩かれた。

「あ、っ!あ……っ、はぁ あ ん っ!」

ビリビリと痺れる。
波紋のように快感が到達していく。
ここまで強く 叩いてくれて、感激して涙が出てくる。

「変態だな、この女。尻 叩かれて、悦んでやがる。」

パシーンと、また叩かれた。

「ぐうぅぅうっ!」

尻の頬の刺激と、髪を適度に引っ張られている刺激とで、瑠璃にはもう充分過ぎる、悦びのお仕置きだった。

「ほら、ケツ 突 き出せよ。」

尻を摑まれ、瑠璃は言われた通りに尻を 突 き出す。
また指が入ってきて、音を激しく立てた。

「や らしい 穴、丸見えだぞ。」

見てね、チカ。
全部見てね、瑠璃を。
瑠璃の 中まで、よく観察してね。

「おねだりしろ。じゃないと、挿 れてやらねえぞ。欲しいんだろ?ほら!」

髪から手を放され、取り出した モノで 尻を叩かれた。

「や、やあっ!ダメ、こんなの―入んないっ!」

当たる感触で硬さと大きさが判る。

「入らない?試してみるか?」

ずっ、と突然、挿 れてきた。

「ああー っ!」

「あっ……はっ、いい!ずぶ すぶ 入るじゃねえか。」

チカはこの、入った時が 堪らないと、いつも言う。
瑠璃が絡 んできて、おかえりなさいって言ってくるんだと悦んでいる。

しかし、すぐに抜いてしまう。

「あっ、やっ!いやっ!抜かないでっ!」

「入るかどうかの試しだろ?欲しいなら、おねだりしろよ、お姉さん。硬くて 太いので ガンガン 突 いてくださいって、言えよ。」

このパターンは最後まで演技し続けないといけない。
なので、本音と反対の事を口に出さねばならないのだ。

「いやっ!言えない、そんな恥ずかしい事。」

「じゃあ、無しだな。こっちにするか。」

ゴ ム を外してから瑠璃の頭を押さえ、勢いよく屈ませ、口に 含ませてくる。

「んーっ!」

瑠璃の口に 打ちつけてくる。
口の中、喉までしっかり入り、瑠璃は嘔吐く。
思わず口から外そうとしたが、構わず、チカはまたぐっと押しつけてきた。

「ー!」

犯 されている、本氣で。
ゾクッとする。
これが堪らなく、快感を得た。
瑠璃が苦しそうに咳き込んでいるのを、嬉しそうに見下ろしている。
また咥 えさせた。
ムリヤリ 根元まで 入れてくる。

いい、こんなの、いい。
して欲しかったの。
瑠璃はうっとりと、咽ながら、されるがままになっていた。

「お姉さん、スゴく氣持ちいい。巧いよ。いつも 咥 えてんのか?お前、好きものだな。どうだ?この デカいの、下の 口に 欲しくないか?」

口から離され、見下されている。

「欲し……です。」

とろんとした眼つきになり、チカの ソレを 摑んでいる。

「なんて言うんだ?」

「挿 れて……ください。」

「何を?」

「こ、コレ……大きいの、」

瑠璃は、その先を舌でつついた。

「うっ……コレ、じゃあ判んねえぞ。」

チカは氣持ち良さそうな顔をしている。
その弱い部分を攻められて。

「あっ、んっ、挿 れてっ!挿 れてくださいっ!この大きい―」

その顔を見ていたら、演技を忘れ、いつも通りに大声でねだっていた。
チカは瑠璃を立たせ、ぐっと、後ろから入れ込んできた。

「はぁ、あ ん っ!」

この勢いが大好きだ。
すぐに腰を 摑んで、打ちつけてくる。
それがいつもより激しかった。

当たり前だよ、ムリヤリ パターンなんだもん。
瑠璃は喘 ぎながら、このパターンを悦んでいた。

「や、あっ、いっ、」

音が大きく響き渡る。
それが大好きだ。

「ああっ!」

唾液で 濡 らした指が 後ろにも 入ってきた。

「こっちも好きか、お姉さん。いや らしいねえ。」

中で 揉 むようにしている。

「やあっ!ダメっ!そんな、しないでっ!」

「するする 入るぞ、いつも やってんだな、尻も。尻が 氣持ちいいなんて、この変態女。」

そんな風に攻められると、力が抜けてしまう。
下半身がふらふらになり、上半身がテーブルに引っかかかるようになっている。

「ぐっ……あ ん っ、ごめんなさい、こんなヘンタイで―お尻、氣持ちいいのっ!」

「尻が 好きか。ここまでの変態女には、もっとお仕置きしてやらねえとな。」

チカの口が乳 首を求め 吸い、ガリっと噛んだ。

「ああっ!」

「痛いのが嬉しいんだな、お前は。」

「そ……なの、」

こんなの、いい!
ゾクゾクする、チカがいつもより怖くて。

時折、乳 首を噛まれながら、尻を 叩かれながら、汗を受けながら、後ろから 両方 打ちつけられている。

「イ ク ぞ。中に 出すぞ。」

さらに強まり、そして、チカの動きが止まった。

「あっ……  あっ、ああっ!」

いつもより、氣持ちの良さそうな声だった。
その声に、瑠璃はぶるっと震える。
征服されたその悦びに、涙が溢 れてくる。
チカは瑠璃の手首を解放し、後ろから瑠璃を抱きしめてきた。

「―ごめん。かなり痛くした。」

チカはまた、猛省している。

「ううん、スゴくよかったの。こんな風に、いつもして欲しい。」

瑠璃の甘い声に、チカの溜め息が後ろから首にかかる。

「ヤバいな、マジで。」

「何が?」

瑠璃はそのままで首を後ろに向ける。
恥ずかしそうなチカの汗だらけの顔があった。

「マズい。こっちのが本性だよ、俺の。演技しながら、ノリに乗った。瑠璃がドM過ぎて、凄まじく いじめてあげたくて。」

「そうね。最優秀主演男優賞をあげるわ、今回のは。」

瑠璃は、そんなチカにキスをする。

「あたしになら、いいの。スゴく嬉しいの、あんなにされて、狂っちゃいそうだっ。こんなの、大好きなの。して欲しかったの。」

キスをしながら、チカは瑠璃の乳 首に触れる。

「こんなになってもか?ごめん、痛いだろ?かさぶた出来るな、これ。」

「赤ちゃんに噛まれた時の予習よ。」

「いや、ここまで噛まねえ、赤ん坊は。」

すりすりと指で撫 でている。

「ごめんな。」

「いいのよ。」

「喉も大丈夫か?」

「大丈夫よ。」

「お尻も―」

「これは、すぐに赤さも消えるわ。よかったの、あんな強いの、とっても。」

「ごめん。」

「スゴく興奮したんだってば。」

想い出して、瑠璃はまた、うっとりとした。
反省していたチカはその美麗な顔を見て、はあっと息を長く吐く。

「瑠璃たん、続けてのリクエスト、いい?」

「なあに?darling、なんでもいいわよ。」

落ち込みながらも、チカは隠れた欲望を、言い淀まず口にするようになった。

「綺麗な若奥さまに 欲情するセールスマン、やりたいなう。」

「なうって。」

微妙に古い事を口にした。

「抵抗する奥さんを 押し 倒して 全身 ナメ ナメして、奥さんもノッてきて、しゃ ぶりだしちゃうの。奥さん、旦那じゃ満足しないんだろ?って攻めてあげる。」

その口調が可愛くて、瑠璃は笑った。

「いいわ。また、服しっかり着ないとね。」

「おう。外から始めるから、玄関開けてくれよな。あ、途中、ネクタイで 縛って あげるね。」

「そ……、」

ゾクゾクとする。
ネクタイで 縛ら れるのだ。
リボンよりも、さらにしっかりとした生地で 縛ら れるのだ。
想像だけでも、濡 れてくる。

「ああ!瑠璃が超ドMで良かった!明日は絶対に尻尾つける!尻尾、ぶす っと 挿 してやるから。」

「お尻 振らなきゃね。」

瑠璃は顔を赤らめ、両手で頬を押えた。

夜中まで遊びを楽しみ、瑠璃がぐっすりと眠る中、チカは五時に起きて午前中は事務作業と電話確認をこなした。
瑠璃の作ったパスタを食べて、そして、学校に遅れる子どもかのように慌てて家を飛び出していった。

その手の店で、大量に衣装を購入してきた。
嬉しそうに笑って、瑠璃によく似合うと思うと、セクシー且つファンタジーなそれらを見せてくる。
獲物を見せつけるように。

それからすぐに、約束の尻尾を興奮しながら 挿 してきた。

今はチカが盛 っていると、バニーガール姿の瑠璃は、悦んでチカの顔の前で 尻を振った。


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「ご主人さまに甘い卵焼きー」

早朝、ふと眼が醒めた瑠璃は、眠っているチカの唇が動き出し、しっかりと喋り出したから、びくっと驚いた。
寝言だったようだ。
すぐに寝息を立てている。

こんな事は、よくある。
今回は日本語だったが、普段は英語の寝言だし、瑠璃には判らない言語の時もある。

もう、うなされないから、よかったわね。
瑠璃はチカのうねった髪を優しく撫でた。
この人の安心しきった寝顔を見ていると泣けてくる。

無防備な姿を瑠璃に見せてくれているのが、ただ嬉しいし、自分がチカを守りたいと心底願う。

泣きながらチカの頭を撫でて、瑠璃は起き上がる。
ロンドンの夏の朝は日の出がとても早い。
日の入りも遅くて、明るい時間が長いのだ。
今朝は朝食抜きで出る筈だったが、チカ所望の甘い卵焼きだけ作ろう。
卵を残しておいて、よかった。

昨夜、メイドコスプレをさせられたから、その続きなのだろう、チカの夢も。
瑠璃にはアダルトな雰囲気になり過ぎるメイド服だった。
チカは興奮して 胸元を 破っていた。
あれも縫い直さないと。
いや元から、胸が大きい瑠璃にはキツすぎて後ろのファスナーも閉まらなかったのだ。
そういえば、と卵焼きを作りながら、瑠璃は思い出した。

「おはよ。」

「おはよう。」

卵焼きを作り終わった処で、ボサボサ頭のチカが起きてきていた。

「これも夢かな?ご主人さま、食べてくださいって、瑠璃が僕に甘い卵焼きをあーんって食べさせてくる夢を見てたんだ。そうしたら匂いが漂ってきて。ただ、唯一違うのは―」

チカは瑠璃の後ろから抱きしめ、キスをしてくる。

「瑠璃っちがメイド服着てない。」

「チカが破ったから着れないわよ。」

瑠璃は笑って、チュッとキスを返した。
並んで座って、チカにあーんと食べさせた。

「おいちいっ!甘くておいちいの、瑠璃たん!」

「よかったわね、トウチカくん。」

「うーんっ、甘いっ!おいちいっ!瑠璃たんの作る甘い卵焼き、僕、だぁーい好きっ!」

かわいこぶって、大きな身体を感激で震わせている。
あーんと、甘えてくるチカに食べさせていく。

「瑠璃たんも食べようよ。」

チカは箸で卵焼きを摑んで自分の口に半分程入れ、瑠璃の顔に近づける。
瑠璃はそれを齧った。
唇が当たりながら、互いに咀嚼している。

「あたしには、甘すぎなんだけどね。」

「はふんっ!自分が好きじゃないのに、僕の為に甘い卵焼きを作ってくれるの!あーんっ、もうっ、瑠璃るり、可愛すぎるぅ!」

その、両手をぷるぷる振る様子のチカの方が可愛すぎるけれど。
チカのどのキャラも、好き。
チカが紅茶を淹れてくれ、味わってから支度をした。

「いい子にしているのよ。」

四日間留守にするから、瑠璃は出る時に、家にそう伝えた。

「Yes! My mistress! I will protect this house. 」

隣りのチカは、高くて嗄れた声でそう言った。

「なんの真似なの?」

「ブラウニー。」

「誰?」

アニメのキャラか何かかと、瑠璃は想像していた。

「妖精だよ。座敷童みたいな感じの。」

「へえ。」

流石、妖精の国だわ。
瑠璃は微笑んでからハッとして、チカを見上げた。

「いるの?見えるの?」

幽霊が見えるくらいだ。
瑠璃が怖がるから、チカは余りそれを口にしないが。

「I'm here now.」

チカはまた、高くて嗄れた声を出した。

「もうっ!」

瑠璃はチカの腕を叩いた。

「家を守ってくれてるんだよ、瑠璃。怖い事なんて、ない。」

チカは微笑んで、視線を下にしている。

「いるのね、そこに。」

「ブラウニーは、瑠璃が大好きなんだよ。I love you so much.って、言ってる。」

また、その作り声で。
チカが愉快な男だと知っているし、瑠璃を楽しませる為の工夫をあれこれしているから、それが真実なのかは判らない。

だけど、その視線のチカの笑顔がステキだった。
見惚れてしまうくらい。

「じゃあ、ブラウニー、留守をお願いね。」

瑠璃も微笑んで、その先を見つめた。
ブラックキャブに乗り込み、駅に向かった。
パリに向かうユーロスターに乗る為に。


トーチカ~瑠璃シーン⑥後編12へ続く


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日本がコスプレ製品の性能がとても優れているとはテレビで見たことあるのですが、ロンドンにその手があるとか、質がどうとか、わたしは知りません。
でも、チカはある、といいます。

そんなん、知らんがな。

全てチカに任せてます。

この話はチカの独断場か?

さて、俺とお前の攻防戦、というように、徐々に徐々に氣がつくと、

あれ?な事になっているかもしれません。


ましてや、神楽シーン⑥後編25で神楽に瑠璃の浮氣話を語っているチカ。
これも対外的に打ち明けられる程度としてみたら、真実ではないかもしれません。

瑠璃とチカの攻防戦が、↑の頃にはふたりの間でどうなっているのか。

サスペンス劇場。


チカのキャラ変容が楽しい。
普通の俺キャラ
紳士な僕キャラ
執事な私キャラ
幼児な僕キャラ

で、俺キャラでも、
慇懃な俺キャラな時もあれば、
日本の若者俺キャラな時もある。

普段でも演技を心がけているのか、生活を楽しんでいるのか。
その愉快さは、ラテン系のノリなのか。
普通に性格なのか。
チカ、O型説、B型説。
A型が無難説。


オペラカルメン
有名な賑やかな前奏曲もそうですが
日本人は耳に馴染みが深い。
けれど、この曲が何の曲かを知ると、どうしてこれが運動会に流れるのか?と不思議。

チカは瑠璃にカルメンの刷り込みをつけてもいる。


トーチカ~瑠璃シーン⑥から読み返すと、チカはあちこちで刷り込みをつけてます、ぞわっ。

怖い男。

あ、神楽にも刷り込ませたのか。



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